第7話 泣き虫
「冒険者やりたいです!」
あまりにも返事の早さにリコがびっくりしていた。
「返事、はやぁ~」
独特のイントネーションでシムが突っ込む。
「は、ハナちゃん?!」
返事の早さに慌てているのではなかった。
「あ、あれ?」
アタシは何故だか涙が止まらなくて、ボロポロと泣いていた…
何かをやりたいと心から言えた。
既に尊敬に値するリコさんから誘ってもらえたことにアタシは感無量だったのだ。
ゆっくりと、しかし力強く椅子から立ち上がる音が少し離れた所から聞こえた。
バトさん…?
「泣き虫だな、そんなんで冒険者が務まるのか?死ぬ覚悟はあるんだろうな?」
直球の手痛い言葉…
「ありません!」
涙で熱くなった顔とテンションのまま、アタシは無我夢中で応えていた。
「生きる覚悟しか、ありません!」
呆気に取られた顔のバト。
皆も思わず息を飲んでしばしの沈黙…。
「バト、そのくらいにしときなさい。」
リコさんが少し怒った顔でバトを叱りつけた。
「…判りました…」
「お茶、入れ直すね!」
無理矢理に元気な声を出して場を持ち上げようとしてくれるサエさん。
アタシはそのまま声を殺しながら泣き続けてしまった。
すると…
ふわっと暖かくて安らぐ感触がアタシの体を包み込んだ。
リコさんが優しくアタシをハグしてくれていた…。
「ハナちゃん…急にあれこれ言っちゃってごめんね…」
「悪い、俺が余計なことを聞いちまったな…」
年長のダイさんが申し訳なさそうに椅子に腰掛けながら謝ってくれた。
私の名前に意外な反応をしていたことや、バトさんの怖い顔とか、色々あって頭ぐちゃぐちゃだけど、
今はこの温もりが幸せすぎて…
私はまた、誰かに甘えてる…
覚悟…足りてないのかもしれないなぁ…
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