第2話 夢の中のお姫さま

 真っ白な夢の世界でハナは不思議な声を聞いていた…

「起きて…」


(ん…なんか聞き覚えのある声だけど…誰だっけ?)

 懐かしさと暖かさを感じる声…


「ハナ…起きて…」

(お母さん?…じゃない…、でも前にも夢に出てきたことがある声…)


 目を開けたのか、閉じたままなのかも解らない、

 辺り1面は白く覆われた世界。


(あなたは?)


「私は…オヴェリア…」


(おとぎ話のお姫様?)

 ハナは思い出した。小さい頃(今も身長は小さいが…)、大好きで祖母に読んでもらっていた絵本に出てくるお姫様、それがオヴェリア姫。


「ハナ、私の心を探して…」


(お姫様の心??)


「私の力を宿した聖石、それが私の心…」


 そこまで言うと、段々と声が遠ざかっていく…


(待ってお姫様!心ってなに?聖石??)


「探し…て…」


 ハナはハッと目が覚めた。

 見慣れぬ古ぼけた天井…少し固いベッドに寝かされている。

「こ、ここは…?」


 ガタっとすぐ横で木の椅子が転がる音がした!

「あ!起きた!マスター!起きたよーー!」

 甲高い元気な女性の声が目覚めたばかりのハナの耳をつんざく。


「やぁ、目が覚めた?」

 優しさの中に芯のある大人の女性の声。

 声のする方に首を向けると、そこには戦闘タイプのいかにも冒険者というたくましく、優しい微笑みを浮かべた女性が立っていた。

 すぐ隣にはさっき叫んでいた活発そうなショートヘアの女性。


「あの…ここは?アタシ…」

 記憶が曖昧でなぜここで寝かされていたのか思い出せないハナ。


「落ち着いて聞いてね、あなたは魔物に襲われて気絶してしまったの」

 あっ!

「そうだアタシ、湖畔で魔物に…!」

 断片的だが気絶する直前の記憶が微かに脳裏に浮かび上がる。気を失う直前に見た騎士らしき男性の姿もボンヤリと思い出せた。


「災難だったね、でももう大丈夫よ」

 優しく髪を撫でてくれた、その手はしっかりとしていて温かい。






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