第5話 友達

その日、家に帰った僕はリョウくんのデッキが置いてある自室に戻った。

僕はカードを取られてデッキを落としてしまった。

デッキを失った時のつらさは僕も知っていた。

確かに学校ではなかなか勇気が出せず声をかけられなかった。


だからこそ今からデッキを返しに行こうと思ったんだ。


ピンポーン。

インターフォンがなる。


「すみませんどなたですか?」

「マモルか…入っていいか?」

「うん、いいよ」


ドアを開けた目の前にはカードを1枚手に持ったリョウくんがいた。


あのリョウくん、実は…と言いかけた時だった。


「すまねえマモル。お前のカードを取ってしまって。

俺な自分が強いふりをしてればみんなが俺のことを強いって思ってくれると

思ってたんだ。だからずっと威張ってた。カッコつけてた。

でもお前に負けて、大事なデッキを取られて分かったんだ。

俺は全然強くなかった。弱かったんだ。それを必死に隠してたんだ。

ごめんな…」

「リョウくんこれ。返すよ」


その時のリョウくんも涙を堪えてたんだ。でもデッキを手渡した時

彼の目から流れ出した。


「悪いな…」


リョウくんも僕も同じだったんだんだ。

それを僕は知らないだけだったんだ。


「それとお前のカード返すよ…本当にすまんかった」

「僕たち友達になっていいよね」


「そうだな、俺たちは今日から友達だ!」


涙を流してたリョウくんの表情が少し明るくなったんだ。

そう、これが僕とリョウくんが友達になったきっかけだったんだ。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る