第17話 帝流学園

 それから毎日、佐々木部長の元にレギュラーもそうでないものも、打倒帝流学園に燃えていた。まあ、学校名を口には誰も出さないけれど、あの日のことは誰も忘れていない。



 試合当日、帝流学園と当たるのは勝ち抜けば三回戦の決勝だった。今日はスケッチブックももちろんキャンバスもなし。純粋な応援としてきたけれど、また前に席がある。ある意味私もレギュラーだったり?



 一回戦が終わり、お昼を挟んで二回戦が終わりいよいよ決勝となる。頑張ってきた成果がでてるのかな? イマイチ強さの具合がわからない私。前にいてごめんなさい。


 次の3回戦の試合まで小休止。とにかく暑いんでお店の中にいる。涼は一回戦も二回戦もストレートで勝っているからかまだ余裕がある。ちょっと散歩と出かけた。多分、軽いランニングだろう。次の戦いに備えて。いったいどんなトレーニングしたらこの暑さでテニスしてランニングできるの?


 そろそろ戻る頃かなと外を見ると、まただ。またあの子。多分この前と同じ女子校の制服だし。私は外へ出る。やっぱり我慢出来ない。


「涼?」

「あ、凛。じゃあ」


 と、私の方に涼は走ってくる。女の子は私ではなく涼を見てる。凄いな。それはそれで。私を完全無視?


「何話してたの?」

「試合応援してるから頑張ってだって」

「それだけ?」

「それだけっていうか、その後お前が話かけたんだろ」

「迷惑だったんだ」

「もう、違うって。その後の話はないってこと」


 がばっと私の肩を抱いて、


「ほらもう時間。行かないと」


 と次の試合会場まで行こうとする。


「うん」



 着くなり私の肩にあった腕を取り、本気モードの顔つきになる涼。

 前に行くと、周りの空気が変わる。みんなこの前の事を思い出しているんだ。


「さあ、いまから本番だと思え!!」


 佐々木部長のゲキが飛ぶ。


「はい」


 レギュラーもそうでないものも、みんな一丸となってる。

 いいなあ。運動部ってこういうのがあるんだよなあ。一人部外者な私。




 一回戦の谷本先輩は接戦で敗退した。


 二回戦駿河先輩は圧勝。何気にこの人めっちゃ強い。


 三回戦はダブルス。ここで取れば後が楽になるんだけど、負けました。


 四回戦は涼。相手はいかつい三年生。一年生という涼のアナウンスに相手側は、楽勝って雰囲気になる。チャンス!

 ストレート勝ちで涼の勝ち。最初の何戦かはいただいたって感じだったけど。相手側は完全になめてたからね。


 最後ここで決まる。最後はもちろん佐々木部長です。前回は勝ったけどどうなるだろう。


 相手も部長のようです。あれ? 向こうの席によく見たらあの子がいる。なんで、涼の応援でそこにいるんだろう? 見ると周りにも何人か同じ制服が。ああ、友達と帝流学園の応援に来たんだね。でも、涼を見つけたから応援してるって言いに来たわけね。あっちにいるけど。

でも、私いるのに!! ちょっと嫌なんですけど。


 って一人で勝手にあの子に火花散らしてたら、何時の間にか最後のマッチになっていた。


 佐々木部長相変わらず綺麗。動きが綺麗だよなあ。絵になる。実は涼の次に多いのは佐々木部長だった。私のスケッチブックにいるのは。

 太陽がジリジリとコートを焼いてるみたい。打つたびに汗が飛び散る。



 勝ったあ。

 佐々木部長の最後のサーブが決まり、歓声が上がる。もちろんこちら側で!

 雪辱戦だっただけにみんなまた泣いてる。

 戻って来た部長にみんな抱き、また泣く。


「みんな、よくやった。ここからまたはじまる。これから、また今以上に頑張ってくれ」


 佐々木部長、喜んで浮かれてるみんなに何気にめっちゃハードルをあげてない?



「涼今日は負けなしだったね」


「え!? あ、そうだった?」


 そこには気をつけてないんだ。あんなに試合したがってたけど。勝つことが大事なのかな? と、前にあの制服の一団がいる。そこからあの子がかけて来た。なんの用だろ?


「佐伯君!」


 あ、名前知ってるからやっぱり……あ、試合見てたらわかるか。


「今日も友達が帝流学園側にいるからあそこに座ったけど、今度からは一人でも応援に行くね。じゃあ」


 あ、行っちゃった。いやもう、私の事無視だし。見事バッサリ。


「ねえ。名前最初から知ってたの、あの子?」


「え、あー、あ! うん。そういや言われた」

「同級生じゃない。どう考えても! 女子校なんだから、中学の時の同級生じゃない!」

「いや、知らないよ。覚えてないし」


 ああ! もう、私のいる前でするの? 普通はするの?

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