第12話 涼の部屋2

「良かった。で、何人?」


 そう言って離れた。ドキドキがおさまるけど、居心地良かったな。涼の腕の中。昨日はドキドキし過ぎてわからなかったし。

 って!? 何人って? えっ! 聞くそれ?


「凛。何人?」

「え。嫌だよ。そんなの答えない」

「ふーん。そんなに多いんだ」

「そんなことない! と、思う。あんまり覚えてないかも……」

「えっ!」

「だって一日保たなかったり……」


 今思い出した数でいいかな?


「凛……」


 あ、涼、絶句してる。


「五人かな?」


「多い……」


「ほとんど、というか全員5日も付き合ってないし」


「短っ!」


 涼の顔が不安気になってる。ああ、俺もその一人かみたいに。


「違うの。好きって思っても、なんか違ってたの」


 ああ、なんと言えばいいの。


「こんなに好きになったのは涼がはじめて!」


 い、勢いで抱きついちゃった。でも、言ったことは本当。


「こんな風に抱きついたことも一度もない」


 あ、また揺れてる。


「もう! 笑ってる?」


 見上げると笑顔な涼。


 っていうか、こんなことさらっとできてる涼のが多いんじゃない?


「涼は何人よ?」


 聞いたけど答え聞きたくない。ああ、私ばか。


「ゼロ、ゼロ人だよ。親父のスパルタのせいでそれどころじゃなかったし」

「嘘!」


 あ、また追求して……


「本当だよ。そんな風に見える?」

「見える。見えるよ。初日の告白だって!!」

「んー。そうなの?」


 ああ、天然でやってたのね。そういえばさっきもズボンまで私の前で脱ごうとするし。

 ただの、天然に振り回されてたのね。


「涼のばか」

「バカってなんだよ! 嫌なの?」


 さっと目の前に涼の顔があらわれる。うう、近い。


「い、嫌じゃない」

「そう」


 って、笑顔になる。可愛い……

 フッと唇が重なる。はじめての感覚。う、キスって想像より気持ちいいかも。


「はじめてだった?」

「うん」


 あ、素直に言っちゃった。


「ふーん。五人の男はなんもなしと」


 涼ニヤついてる。


「もう、そこは話題にしないで。一人いるし学校に」

「え!? マジで誰?」

「言いません。だから、言わないでもう」

「わかった。いや、凛があんまりにもだったから、聞いたけど意外な答えでビビったよ」


 うるさい話題が変わってないし! ってかあんまりにもって何があんまりなのよ。


「涼も意外だったけどね!」


 嬉しかったんだけどね。涼のお父さんのスパルタに感謝。



 あ、時間!


「今! 何時?」


 窓の外が暗くなってきてる。

 返事も聞かず、私は立ち上がり荷物を手にする。


「ああ、もう帰るね」

「じゃあ、送るから、ちょっと待って」


 とすぐに涼はユニフォームを脱ぐ。え、あ、近い、近いよ。

 すぐにTシャツに着替える。



 私を送る涼はなんか嬉しそう。ユニフォーム? 私の恋愛話? いったいどちらで上機嫌なんだろ?



 いつもより遅い帰宅に莉子といたと言い張って、母の詮索を逃れる。前に彼氏、ん?? あ、3日続いた彼といるとこ見られて、うるさかったのを覚えてる。しかも、次の日にはもう別れてたから余計にうるさく感じた。もう彼ではないと言い続ける虚しさ。自分って人を好きになれないんだと、半ば落ち込んでたから余計にね。告白されて、まあ、いけるかと思っても全滅だった。高校生になって、もう告白は受けないと決めてたら、まさかの相手からのまさかな告白だった。



 そっか、あれは天然かあ、あ! 私今日、初キスだった。なんで、あんなに軽いんだ。緊張感ゼロだし。あ、天然。

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