第11話 涼の部屋

 神社にもちろん住んではいません。近くのうちに住んでいて、おじいさんはまた別に家があるようです。なにせ騙した形で継がせたから揉めたので同居しなかったそう。


 普通のマンションで、意外だな。神社からの想像だったからね。


「お邪魔します」

「どうぞ」


 って、涼が答える。


「あれ?誰もいないの?」

「あ、親父は仕事中、お袋は別居中。なにせ、神社継ぐんで揉めてて」


 神社って大変?


「ふーん。そうなんだ」

「こっち。俺の部屋」


 すっと涼の部屋に入って何気にベットに腰掛ける。ん!

 ダメじゃない! 私! 誰もいない彼氏の部屋に、いやこの際、男の子の部屋にすんなり上がって、なにベットに腰掛けてるの!!


 涼はと見ると嬉しげに制服脱いでます。だ、だろうけど、気にして!! 少しは! 私の存在を!

 でも見つめちゃう。あ、意外にじゃないか筋肉ついてるね、やっぱり。って!

 って!!さすがにそれは目を逸らすよ。気づいて涼!

 ガシャガシャってベルトの音がする。


「あ」


 と、言って再度ガシャガシャ音がしてる。すぐに鞄を探ってるのかビニールの音。

 良かった。涼は気づいた。

 また、涼に目を向ける。うう、ジャージと違うなあ。かっこいい。

 私って涼の外見が好きなんだろうか。初めて会ってすぐに涼に会うためにテニス部行ってるしな。


「どう?」


 沈黙してた私を見て首を傾げて聞いてくる。うん。微妙。下は制服だからね。でも、


「似合ってるよ。涼って細く見えてたから、意外だな」


 と、私の感想聞きながら何故か横に座ってくる。え! どうしようこの展開。


 焦る私に全く気づかず、どうやら鏡で自分の姿を涼は見てます。よっぽど嬉しいんだね。あれ? なんで?


「ねえ? 中学でもレギュラーだったんでしょ?」


 なぜ、レギュラーのユニフォームにこんなに反応するの?


「あ、いや中学テニス部なかったし」

「え!?」

「あ、正確に言うとソフトテニス部しかなかったんだ」


 えーと確か。


「ソフトテニスって白いボール?」

「そうそれ! だから、こうレギュラーとか試合とか嬉しくって」


 ……なんで涼は強いの? っていうか!


「なんで前の学校、先生の一存でレギュラーだったの? っていうか何で強いのよ!」


 涼は笑ってる。可愛い、じゃなくて!


「親父に教え、いや、叩き込まれたんだよ。親父の奴プロだったからハンパなく鍛えやがって。で、前の学校の先生、親父のこと知ってて初日に軽くテストしてレギュラーになったから、他の先輩納得してくれなくて」


「じゃあ、今日みたいにしたことなかったの?」


「ああ、毎日楽しいよ。親父相手だともう試練だったからな」


 お父さんの話のくだりになると一気にテンションが下がる。よっぽど鍛えられたんだね。


「そっか。じゃあ、レギュラーおめでとう!」


 涼にとっては当たり前の展開だと思ってたからまだ言ってなかったかな? 言ってても気持ちが違う。良かったね、涼。


「ありがとう、凛」


 って、抱きついてきたよ。どうしよう。拒否するのもなんだけど、付き合って二日目だし!!


 ん? なんか揺れてる? 笑ってる涼!


「凛って、本当こういうの苦手だな」


 笑いながら言われたよ。そうだよ、苦手だよ。


「付き合ったりしたことないの?」


 耳元で言われたセリフがこれって……


「ある。けど、すぐ嫌になるの。なんか違うって思えてきて」


「ふーん。じゃあ、俺もヤバイ? イメージと違ってきてるんでしょ?」


 それはそうなんだけど、涼を見た瞬間涼は不機嫌な顔だった。その後もクールに無愛想だった。だけど、


「イメージと違ってる。けど、いい意味で違ってる。多分あのままなら付き合ってないか、ここにはいないよ」


 そう、今の涼を見てるからここにいる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る