第21話初フレンド

 クローネシュタットの南門を抜けたところで、昨日の一人と思われる人から声を掛けられた。


「こんばんわ。えーすさん……」

 彼は獣人犬男戦士、名前は前田利家。渋いなあ。柴犬っぽい感じ? 全身明るい茶色で、眉と顔の下半分から胸元に掛けて白い。

 当たり障りの無い会話をしているが、モジモジしているようにも見える。大人として私から声を掛けてあげるべきかな。


「もしよかったら、今日も兎狩りするかい?」

 二つ返事で承諾してもらったが、クエスト報告とドヤ顔する用事があるのと、もうすぐ夕飯なので一旦落ちて、日本時間十八時半、ゲーム時間十七時から再開することにした。


 再ログインして、待ち合わせ場所に向かうと、プレイヤーが三十人位いた。西門を抜け昨日と同様の注意点をしたところで、手を上げた獣人兎女戦士が少し前に進み、


「レアドロップが出た時の分配を決めた方が良いと思います」

 どうやら一緒に狩りをする場合、このような取り決めをして、後々揉めないようにするらしい。

 エリートが兎の涙を出すのは、ゲーム内で話題になっているそうです。参加者に聞いたところ、エリートが出たら皆で倒して、ランダムドロップで手に入った人が貰うのが良いという事になった。


 ちなみに、彼女名前は”はんがくごぜん”全身真っ白、頭の上に兎耳が付いている。でかいという訳ではないが筋肉がしっかり付いている。バニーガールというよりは、兎筋肉女って感じだな。

 しかし変わった名前をつけるもんだな。私と同じで特売やタイムセールが好きなのかも知れない。

 でも半額になるのは閉店間際じゃないのか? 彼女の行ってる店は、開店時に昨日の売れ残りが半額になっているのか?



 やり方は昨日と同じで、私は基本走り回っているだけだ。でも新人が一生懸命に狩っている姿は微笑ましい。

 よくよく見ると、前田とハンガクが、色々な人をフォローしているようだ。面倒見がいいんだな。


 二時間くらい狩りをしていると、何人かがお礼を言って帰っていった。途中参加者も増えているようで、メンバーは増えたり減ったりしている。


 そろそろ二十一時になるので、狩りを止めて帰ることにした。しかし、前田とハンガクは最後まで残っていた。

 LV五になるための経験値溜まってないのかな? 昨日からやってるなら、もう五になっても良いんじゃない? 経験値一万入るアイテムだってあるのだから。


「前田利家さん。まだLV五にならないのですか?」

 笑うような、困ったような表情をしている。


「LV五になるための経験値はあるのですが、こうやって狩りをするのが楽して。だから五にしてないんです」

 確かに新人指導って楽しいな。私も新人だけど。でもそのために五に上げないってのは、ちょっと自分のためにならない気がする。


「えっえーすさん。もし良かったら、この後一緒にパーティ組んで、どこかで狩りしませんか?」

 お、お、どうしよう初めてのPTだ。断る理由は思い当たらないな。人とゲームするのは楽しいし、私のことを馬鹿にしている訳でもなさそうだし、前から誰かとPT組みたかったし。


「ちょっと待って下さい」

 と、ハンガクが割り込んできた。


「わ、わたしも一緒に行きたいです!」



 一旦小休憩を挟み、ゲーム時間二十二時から再開した。私が初めてのPT、まだ戦闘慣れしていないという事なので、近場の北側でゴブリン、コボルト、オーク狩りになった。


 アイテムはランダムドロップで手に入った人が貰う方式にして、ギルドで討伐系のクエを受けて北門から出た。初めての北門だ。

 隊列は私と前田が前衛で二人共槍だ。ハンガクは弓。一番最初は弓で攻撃して、近づいてくる敵を迎え撃つ作戦だ。

 魔法慣れをしていないので、私からのヒールは期待せず、基本自分自身で回復するように決めた。


 ゴブリンの集団が見える。ハンガクが弓をうち、ゴブリンの一体に当たる。ゴブリンが怒り出した。棍棒や短剣などの武器を上に突き出しながら小走りで走ってくる。

 槍で突くと即死か簡単にヒクヒクする、近づかれる前に倒してしまった。弱。確かLV二で野犬と変わらんのか。

 剥ぎ取ると何にも出なかった。あれ? 武器とか防具出るんじゃないの? いま持ってたよね?

 百%手に入るようなものではないらしい。いやでもだって持ってたし、着てたよね? 全部寄越せよ……


 コボルトの集団にもあったが、こちらも弱くてあっさりと倒した。コボルトは少し犬っぽい感じで小さかった。


「コボルトはドイツ語で、英語だとゴブリンって訳さ……」

 ハンガクがウンチクを話している。説明してくれているのかも知れない。人に教えるのが好きなのかな? 今日も新人フォローしてたからな。


 その後ゴブリンやコボルトの集団をどんどん倒している。

 しかし、ぱっとみが同じに見える、同族の別タイプ、リーダー、アーチャー、メイジ、エキスパート、はやっかいだ。

 リーダーはフットワークが良く、あえて一匹が槍の犠牲になっている間に懐に入り込んでくる。

 アーチャーは遠くから矢を打ち込んできて、前衛が戦闘に集中出来なくなる。

 メイジは個体によって使える魔法が異なり、あと少しって思ったところでヒールを掛けたり、ウォーターベールを掛けまくって戦闘時間が伸びたり、アースウォールを出してその後ろからアーチャーが弓を打ってきたりと、自分が使う分には魔法っていまいちなんだけど、使われると面倒この上ない。

 ゴブリンエキスパートは、リーダーを少しタフにした程度なので、メイジ程面倒ではない。それでもLV六で、ジャアントラビットエリートと同じだって。


 オークも討伐した。この前洞窟であったのと同じタイプだ。特徴は緑色で、人より大きめ、筋肉が結構ついてる。露出度高めなのは筋肉自慢なのか? 狩猟を主としている原住民をイメージさせるような装飾をしている。

 チカラが少し強く、体格が大きいだけで、他は特にゴブリンと代わりがない。ここではノーマルオークしかあっていないが、リーダー、アーチャー、メイジタイプがいる。



 今日の戦闘後の剥ぎ取りで、革の服、革の腰当て、革の篭手、革の靴、革の帽子、が出て、服と腰当てを前田が、篭手と靴と帽子はハンガクが貰っていた。

 いや全然要らないし、持ってるし、所持金だって三百万あるし、全然羨ましくない……。

 見せてもらったけど店で買うよりもボロだった。この辺の敵から出る装備は店売りよりも耐久度が低く、使っていると直ぐに壊れるし、店に販売しても全然お金にならないそうです。

 なので鎧とか剣とか拾った装備を持っている人は、複数の装備を持ち歩いているって。ハンガクが解説してくれました。


 早速装備をしているが、帽子を被ると兎耳が帽子を突き抜けて見えるのは不思議仕様だ。

 革の服に着替える時に、若干前田のうなじの辺りの毛が赤色に見えた。変わった配色をするものだな。



 戦かった感想は、人型の敵は猪や兎よりも遅いし、面積が広いので攻撃が当たりやすい。相手の攻撃力が弱いのかあまりダメージを受けない。これならいくらでも倒せそうだ。

 敵が弱いので安心して避ける練習が出来て、上半身の避ける動作の発動率があがっている。



 ゲーム時間二時、日本時間二十三時になったので、狩りを止めて街に帰って来た。解散しようとなったところで、


「えーすさん、フレンド登録をお願いしたいのですが良いですか?」


「あ、私もお願いします!」

 と、前田とハンガクが言ってくれたので、ハンガクにやり方を教わりながらフレンド登録をした。


 前田は学生なので夕方から夜にならないと、平日はログインできないそうです。

 ハンガクは社会人! なので、やはり平日は夜にならないとログイン出来ないそうです。私の中では委員長って思ってたんだけどな。


 ハンガクは鍛冶屋だったなので、持っていた素材と思われるアイテムを見せたところ何か出来るかも知れないとのこと、コウモリの牙、羽、ふん、ヤマアラシの針を渡した。

 決してゴミ整理じゃないから。全部あげて出来たものを報告してくれれば良いと言ったら、


「そんな困ります。良い物が出来たらお渡ししますね」

 だって、律儀だな。良い物が出来なかったら要らないですよ。


 北門側のギルドで討伐報告をしてログアウトした。お、孫娘からCONNECTが来てるぞ。何かなー


「おじいちゃんステキ(*´ェ`*) 初心者の支援活動しているんだって? 皆喜んでるみたいよヽ(´▽`)/」

 うふふふ。情けは人の為ならずか。孫娘からの評価が上がった。


「(〃▽〃)照れる。敵が少なくて狩りが大変なようだったからね。初心者支援楽しかったよ(^O^)」


 お、返信が来た


「楽しそうで良かった( ^ω^) これからも頑張ってね」 


 はい。がんばります。

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