第32 恋の味

 ドンドン ドンドンドンドン


「おーい。毎日かあ?」


 葵にはカーテン関係なくバレてるね。


 私達は服装を整えて、それぞれ洗面所へと向かった。

 昨日は早く寝たのに、一昨日の睡眠不足のせいでまたまた十時までぐっすりと眠っていた。


 朝ごはんは昨日のように無言ではなくいつもの三人に戻っていた。葵も城太郎もいつもの二人だった。


 そして、昨日ように城太郎はバイト、葵は荷造り、私は宿題をして過ごす。


「よーお。今日ははかどってる。ってか、マジで間に合うの?」


 葵が居間にやってきた。今日はダンボールが昼から届くらしい。本当に本格的に出て行くんだね、葵。


「間に合います。あと少しなの」

「しゃーないな。そんな遥ちゃんには今日もお昼をご馳走しよう」

「え、いいよ。毎日。葵もダンボール来るんでしょ?」

「俺は余裕だよ。誰かさんとは違ってね」

「あ、もー、はい。お願いします!!」


 なんで葵は余裕なんだか。キッチンで料理を始めた。


「出来たよ! 遥」

「はーい。今いきます」


 匂いで予想がついていた。始めの日と同じ丼。


「いいただきます」

「おう」


 懐かしいなあ。まだそんなには経ってないのに。あれは春休みだったっけ?


「懐かしいな」

「ん? 何が?」

「葵が初めて作ってくれた料理だよ」

「そうだった?」

「うん」


 懐かしい。


「ふーん。そうだったか」

「そう。これを食べながら城太郎の情報を聞いてた」

「そうだったなあ」

「城太郎……」


 いろんな男の子を想像したけど城太郎は想像できなかった。クールで冷静沈着なのに可愛い。スイーツ好きだし。何でも平気そうなのに意外に気にしてる。可愛い。


「あ、遥、城太郎の部屋に入ったんだよな?」

「え? あ、うん」


 葵、さっき思いっきり城太郎の部屋のドア叩いてたじゃない。


「プラモの趣味を遥に隠してたんだよなあ。あいつ」

「だよね? なんで?」

「さあ。あんまり女子に受けないと思ったからじゃないか?」

「ふーん」


 やっぱり可愛い。そんなこと気にしないように見えるのに。


「遥。にやけながら丼食うな」

「いいじゃない」

「丼の味してるのか?」


 そういえば……恋の味しかしないかも。あまーいハチミツ味!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヤジルシ! 日向ナツ @pupurin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ