第36話「決戦の地へ」


 ビショップはラルク達にガーディアンズの機密を教えた。

 ガーディアンズ幹部が何度ボディを破壊されても蘇る事ができる、バックアップ。

 そして、ガーディアンズの本拠地が現ゼイオン領、ラングルー山脈にある事も。

 偵察の結果、ビショップの言う通り神殿の地下に本拠地が存在する事が明らかになり、ビショップの情報を元に作戦が練られる事となった。

 そして、エレシスタ軍とゼイオン軍による攻略作戦が始まろうとしていた。

 エレシスタ軍からはラルク達テンハイス騎士団第五部隊とリン・フェールラルトに、投降したビショップ。

 ゼイオン軍からは皇帝レーゼに、三将軍の一人であるライズとハオンを主として部隊。

 そうそうたるメンバーが揃っており、それほどに大きな戦いになると言えた。


「ここにガーディアンズの本拠地があるのか?」

「厳密に言えば、この地下だ。そこにキングが必ずいるはずだ」

「地下にそんな施設があるなんて……」


 ラルクの質問にビショップが答える。

 第五小隊の前には、森の中で白い神殿が朽ちているだけのように見えていた。

 ビショップによれば、神殿の中に地下へ繋がる扉があるのだという。

 

「魔力反応探知!気づいたようです!」

「流石に気付いたみたいだね」

「来るか!」

「何機来ようが相手してるっての!」


 クレアの報告に、ヘンリとデルトとスアンの三人が強気に答える。

 何機もの魔動機が神殿の近くにいる今、ガーディアンズからも何か動きが出るのは必然と言えた。

 大きな音を上げなら地下への扉が開き、次々とポーンが神殿から姿を現してくる。


「レーゼ様!ポーンの中に大きな魔力反応を探知!」

「幹部級のお出ましか!」

「各機、気を引き締めていけ!」


 ゼイオン軍もハオンのレーガインが敵機の魔力を捉えたようであった。

 それに対し、ライズもレーゼも臆する様子は見えない。

 ビショップの情報により、ガーディアンズのトップであるキングの他に、クイーンとルークの幹部が存在している事は知れ渡っている。

 ポーンよりも大きな魔力を発している……それは、幹部が動いている何よりの証拠と言えた。

 そして赤き魔動機、クイーンが神殿から姿を現した。

 他のガーディアンズの例に漏れず人型ではあるが、両脚を隠す長いスカートのように装備された大きなブースターは、他の魔動機と一線を画している。


「人間の味方になったってのは本当のようね、ビショップ」

「クイーンか……!」


 クイーンは敵を見下すかのように、空高く留まっている。

 ビショップとクイーン、嘗ては仲間であっても今は違う。

 人を傷つけ苦しめるのであれば……

 人間の味方をするのであれば……

 もう既に、彼らは敵同士になっていた。


「人間の手先になるとは、堕ちぶれたモノね!」

「人間の為に人間の味方をする……それが機械だ!」

「ならば何も言うことはないわ、行きなさいポーン!」


 ポーンが前進し、ついに人間とガーディアンズの決戦が始まろうとしていた。


「第五小隊は神殿へ!」

「わ、分かりました!」


 ストームバレットが二丁の銃でポーンを狙い撃っていきながら、リンはクレアに指示する。

 

「行きましょう、皆さん!ビショップ!」

「了解した。クレア・テーベル」


 クレアをはじめとする第五小隊、そしてビショップの六機もエレシスタ軍とゼイオン軍と共に神殿へと向かう。

 だが、その道をクイーンが阻む。


「ここで死になさい!人間共よ!」


 すると、上空のクイーンから赤き魔弾が地面に降り注ぐ。

 それはまるで雨のようであった。


「クッ、ハンパねぇな……」

「こんなに撃たれたら、私も飛べないじゃない!」


 次々とナイトやゴブルが撃破されていく中、ラルクのレオセイバーはクイーンの魔弾を前に苦戦している様子であった。

 スアンのイーグルランサーも、この魔弾が前では取り柄である飛行能力が活かせずにいた。


「次で最期よ!」


 クイーンの掌に魔力が集中していく。

 あれに命中すれば、ひとたまりもない。


「ヤバイぜこりゃ……!」


 レオセイバーがソウルガルーダの翼を広げ回避しようとしたその時であった。

 何かの魔動機がこちらへと近づいてくる事に気付いた。

 背後から近づいてくる。少なくともガーディアンズではないようだ。

 では誰なのか?何者なのか?その謎は深まるばかり。

 クイーンの掌から巨大な魔弾が放たれたその瞬間、何者かがそれを防いでいる事に、ここにいる誰もが気付いた。

 白い機体、片手には剣、そして光の盾、その正体は……



「あれは……!」

「アークセイバー!」

「アレク!」


 レーゼとライズ、リンはその魔動機に覚えがあった。

 そう、アークセイバーだ。


「久しぶりの実戦だ。行けるな?」

「あぁ!行くぜ、マギラ!」


 マギラ、そしてアレク・ノーレもアークセイバーと共に戦場へと戻ってきたのだ。

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