第5話「輝きの剣」後篇


「なんだこれは、力が湧き上がる……!」


 アークブレードが剣先を空に向けるように剣を構えると、刃が魔力の光に包まれ、刃を包んだ光は上空の雲を穿つほどに伸び、上空を覆っていた黒い雲が消えて晴天の空が見え始める。


「何の光だッ!」

「あれがオリジンの力……」


 ヴァグリオとリンは驚き、思わず声を出す。

 当然一時的とはいえ雲まで伸びる光の刃を持った魔動機など存在しない。

 故に驚くのも不思議ではなく、光を見た誰もが驚いていた。

 空高く伸びたほどの光は段々と纏まっていき、最終的には剣身が輝くように剣に纏うになっていた。


「ふんっ、どんなこけおどしは知らんがッ!このオレが蹴散らしてくれるッ!」


 ガルディオンは両手に槍を持ち、槍先に纏った魔力を飛ばし斬撃を放つ。

 しかし、放つ瞬間に既にアークブレードは移動しており、ガルディオンの真横を通り過ぎていた。


「いつもよりも速い……これならッ!」


 アークブレードとガルディオンが振り向きお互い向き合うと、ガルディオンは槍で突くが、アークブレードは見切ったように剣で払い、槍を切り裂く。


「クソォ!」


 ただの棒となった槍を捨て、ガルディオンは右腕で殴り掛かるが、またしてもアークブレードは見切ったようにその右腕を斬り落とす。


「今だ、アレクッ!」

「ああッ!」


 マギラの声に合わせアークブレードが剣を両手で構ると、大量の光が剣を中心に渦を巻き始める。


「放て!アークッ!カリバーァァァァァ!」


 次第に光の刃がアークブレードよりも大きくなり、アレクは思い切り光を纏った剣を振り下ろす。


「バカなァァァァァァッ!」


 ガルディオンは光の刃により真っ二つに斬りられ、光の中で塵も残さずに消えていく。

 振り下ろされた光の刃は地面も斬り、1km近くに渡り地割れが生まれた。まるで天変地異のように。


「はぁ……はぁ……」


 暫くはアークブレードを動かせない程に大量の魔力を使い、アレクは息を上げ、汗を流す。

 アークブレードの剣は光を失い、以前のような姿へと戻っていた。


「アークカリバー……これがアークブレードの力……!」

「そうだ。だがこれもまだ力の一部でしかない」


 アレクの独り言にマギラは応える。

 アークブレードの光り輝く剣は本機にとって切り札であり、千年前の大戦ではこの力で数え切れない程の魔動機を仕留めたのだという。

 これだけで力の一部であれば、全ての力を解放したアークブレードはどうなるのだろう。

 過剰な力を持てば敵を警戒させ、レーゼの時のように攻めてきてもおかしくない。

 エレシスタを守るのに過剰な力は解き放ちたくないとアレクは思った。


「これで勝負は付いたのか……?」

「そうよ。終わったのよ、戦いが」

「全く、とんでもない事をするなお前は」


 リンとレイから通信が入る。

 戦いが終わり、二人の声が聞こえアレクは胸をなで下ろす。

 この戦いで誰か死んでもおかしくはなかった。

 それでも、三人共生き延びた。

 戦う前から胸の奥に秘めていた不安がアレクから消えていく。

 一方その頃、シュルトバインはアークブレードを見つめていた。

 アレには今まで以上に警戒しなければならない。

 アークブレードに対するクーヴァの認識が改められた瞬間であった。


「アークブレードにやられるとは……まぁ、相手が悪いとも言えますが、その程度の人という事ですね。ヴァグリオ・ド・メガルヴァ」


 ヴァグリオは死に、過去の皇帝となった。

 これからのゼイオンを導くのは死人ではない。今を生きる人間だ。それも、強き武人だ。

 クーヴァは待ち望んでいた。ヴァグリオに代わる強き皇帝を……

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