第20話「それぞれの思い」
ここはゼイオン帝国帝都ディセルオにある、ディセルオ城……
皇帝の間にて、現皇帝レーゼの前に三人の男がいる。
彼らは帝国三将軍。三年前の戦いで戦死した帝国四将軍であるガゼル、クーヴァ、ゴーレルに代わる者達であった。
「皇帝陛下、北部でガーディアンズと名乗る者達の被害が相次いでおります。防衛のため軍備拡張を進めるべきでは」
レーゼに提言する銀髪の男の名はツヴァイス・ゴ・バルティミス。
実力主義のゼイオンで帝国三将軍にまで上り詰めた程の操者だ。
「やはり、ここはオリジンを見つけ戦力にするというのはどうでしょう?」
次に提言した眼鏡をかけた男は、ワーグ・ガ・ヴォルファ。
魔術研究者であり、ヴァグリオ皇帝時代に魔動機の改良を進めていた男だ。
魔動機の操縦技術も高く、それ故に帝国三将軍の一人となった。
「となれば、あの四機だな……」
「ですが、アレは半年前に研究所を脱走し、それ以来行方をくらませています。どこにいるのやら見当も付きません……」
「だが、四機のうち三機の操者はゼイオン人。少なくともゼイオン領土内にいる筈だ」
不幸の中の幸いか、街を襲うなどといった事が起きなかったが、脱走兵として今日までゼイオン軍の追手を退けてきており、行方をくらましている。
休戦条約が結ばれ三年経つが、未だにエレシスタとゼイオンの溝は深い。
エレシスタ領土内でゼイオン人が密かにも住む事は難しいだろう。
ならば、まだゼイオン領土内にいるはずとレーゼは推測した。
「捜索はライズに一任する。目撃情報もそちらに渡るように手配しよう。だが、ソウルクリスタル搭載機ばかりを当てにする訳にもいかん。情報を元に見つからなければ早々に引き上げて良いぞ」
「はっ、このライズ・ガ・アクセ。全力で捜索に当たります」
そして、帝国三将軍最後の一人はライズ・ガ・アクセ。
ガゼルの弟子にして、三年前の戦いで生き延びた実力が認められ、帝国三将軍の一人となった。
***
レーゼからの命を受けたライズは、部下と共に格納庫で出撃の準備を始めていた。
「つまり三機のオリジンを探せって事か」
「そういう事だハオン」
ライズと話している青髪の男の名はハオン・フィ・イフォン。ライズの補佐を務めている軍人だ。
ハオンはライズと同い年であり、休戦条約締結後共にゼイオン内の反乱分子鎮圧で戦ってきた戦友でもあった。
銃を使う者は卑怯者、臆病者という風潮の強いゼイオンで敢えて射撃型の魔動機に乗り数々の戦果を上げてきたという。
その時の活躍からライズ直々に補佐に指名されたという経緯があった。
補佐であり友人でもあるからか、三将軍の一人であるライズと対等の立場で話し、突っ走りやすいライズを支える参謀的存在と言えた。
「オリジンは敵に回せば面倒だが、逆に味方となれば頼もしいヤツだ。だから、オレ達でぜったいに見つけねェとな!」
「張り切るのもいいが、見つからない可能性も考えておく必要がある」
「それは分かってる。だけど、オリジンを野放しには出来ねぇだろ?」
ライズの脳裏に三年前の戦いの光景が浮かぶ。
ゾルディオン、そしてアークセイバーの圧倒的な性能を忘れる訳もない。
師であるガゼルがオリジンを危険視していたのも十分に納得できるほどであった。
だからこそ、ライズはなんとしてでも、オリジン三機を確保しようと考えていた。
それは皇帝レーゼの命だからというのもあるが、三年前ゾルディオンによって命を落としたゴーレルを始めとしたゼイオン軍人の為にと考えていた。
(あの戦いの後だと、アンタがあれほどにオリジンを警戒していた意味が痛いほど分かるぜ、師匠……)
格納庫で待機しているヴァーガインとハオンの魔動機、レーガインを見つめる。
ガゼルのようにオリジンに対する危機感を失ってはいけない。
間違った道へ歩もうとするならば、なんとしてでも止めなければならない。
最悪な事態を招かぬよう、最善を尽くさなければライズの気は済まなかった。
***
テンハイス城の格納庫……
整備士達は先日の戦闘による損傷した魔動機の修復に当たっていた。
「レオセイバーの調子はどうだ?」
「はいっ!目立った損傷がないお陰で、もう整備終わりましたよー」
ピーフォウィザーの操縦席から、クレアが出て来る。
魔術に精通しているため、彼女もナイトの整備や、自身の機体であるピーフォウィザーの調整をしていた。
「ピーフォウィザーの方も整備は終わりましたが、その……悔しいです」
あの時共にビショップと戦ったラルクには、クレアの言いたいことはすぐにも分かった。
「ラルクさんやダリルさん、他の操者さん程魔動機の操縦に慣れてないのは自分でもわかります」
「それでも、でも……私しかピーフォウィザーが動かせないのに……ビショップに負けて、魔術を悪用する彼を止めることが出来なくて……」
魔術を自分の為だけに使い、人々を支配しようとするガーディアンズは許せない。
そんな彼らを止める、ピーフォウィザーという力を自分は持っている、それなのに止められなかった。撤退しなかったら殺されていてもおかしくなかった。
それがクレアにとってとても悔しかった。
ラルクも口には出さないが、同じ思いでいる。
「生きてればチャンスは来る、だからそのチャンスが来たら絶対に逃さない。それだけだな」
「フフフッ、いいですねそういうの。『兎は獅子を狩るにも全力を尽くす』ってやつですね!」
「なんだそれ、それを言うなら『獅子は兎を狩るにも全力を尽くす』だろ」
「そうでしたね!私、間違えちゃいました!」
さっきまで沈んでいたクレアが笑顔を浮かべている。
真面目ではあるのだがことわざを間違えたりと、やはりどこか抜けている所があるなとラルクは内心思った。
そんな時、二人の身体に異変が生じる。
何かに引っ張られるような……そう、レオセイバーとピーフォウィザーが接近したあの時のような感覚であった。
「この感覚……もしかして、他のソウルクリスタルが呼んでいる……?!」
頭を抑えながら、クレアは自らの推測を話す。
そして、その推測はほぼ正解と言えた……
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