第3話 タイムマシンは存在するのか?

誰もが信じていることが、実は虚構だと気づくことは不幸な気持ちにさせるかもしれない。

たとえば、こういう事を信じているとしよう。

「そのうちにタイムマシンはできる」

でも、それに反論はできる。

「未来から来た人はいない。なぜなら、未来から来た人がいるならば、さらに未来では、過去への旅行が普通になっているから。わたしたちは織田信長の末路や、坂本龍馬の最期に興味を持っているし、恐竜を見たいと思うだろう。ドラえもんのように、祖先に手を出すかもしれない。歴史的な事件、例えば、震災の被害を食い止めようとする人もいるだろう。つまり、未来人は存在せず、タイムマシンはない」

それでも、こういうだろう。

「過去が変えられれば、新たな時間軸が発生するのだ。複数の人が過去に跳べば、それぞれで時間軸ができるのだ。あなたはそのひとつの時間軸上に生きているだけなのだ」

でも、それにも反論はできる。

「複数の時間軸があるとすれば、タイムマシンに乗り、過去へ跳んだ未来人は、新しい時間軸を発生させるが、彼が発生させた新しい時間軸でのみ生きなければいけない。もしも未来人が自分の住んでいた元の未来に跳ぼうとしても、その時間軸上には存在しない。もしかすると、未来に戻ってみると、第三次世界大戦で滅んだ世界の可能性もある。未来人はもう元の世界には戻れないし、家族がいたとしても、会うことはできない。それでも、前述のようにたくさんの人が過去に跳ぶならば、跳んだ人の数だけ時間軸が発生する。あなたの住む時間軸は、こんなにも混沌としている。各国の政治はめちゃくちゃだし、温暖化は進行している。世界は朽ちている。たくさんの時間軸があるのにも関わらず、あなたの住む時間軸は混沌としている。もっと綺麗な時間軸があるはずなのに、混沌としている。原因は簡単だ。混沌としている時間軸以外は存在をしないから。

タイムマシンは多次元を跳ぶ。原理的には、4次元を経由する。4次元とは時間が立体化した世界だ。だがしかし、4次元が存在するならば、よりさらにすすんだ多次元が存在する。多次元はたくさんの時間軸をすべて見渡せる。話は逸れるが、たくさんの時間軸とは私たちの住んでいる世界とは全く別のたくさんの世界の時間軸のことだ。たくさんの世界がそれぞれ1直線の時間軸を持っている。わたしたちの向こう側の別な世界たちはそれぞれ違う色で輝いている。

話をもどそう。

とても大事なことがある。多次元に飛び込む原理と、多次元から3次元には戻る原理は違う。3次元のあなたが、2次元の世界に入れるだろうか? 同じ理屈だ。例えば、氷が水になる原理と水が氷になる原理は似ているようだが、実際には外的要因が違っている。水は形がないから氷から水になるのは簡単だ。溶ければ水たまりができる。では、水は元の氷に戻れるか? どういう形の氷になれるのか? 水の意思では氷は形成できない。別の要因で形が決まる。

あなたがうまく多次元に入り、多次元から現実の世界に入ったとしても、そこがうまいこと望んでいる3次元世界であればいいが、それが2次元かもしれない。あなたは紙に印刷されているかもしれない。もしかすると1次元かもしれない。あなたは点だ。実は、虚数次元かもしれない。

つまり、タイムマシンとは、多次元世界に突入する機械であり、その多次元世界に迷い込んだ人は、どこにも戻れなくなっている。

今も、タイムマシンでたくさんの人が過去に戻ろうしている。そしてたくさんの人が多次元世界で彷徨っている。

これは事実だ。

わたしがそうだからだ」

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