50話「ゴブゴブのゴブリン」

 ゴブゴブが処刑される時計台がある広場まで、俺達はやってきた。

 アリスは冒険者ギルドに残し。

 先に待機してるリシュアと俺とマリリンは合流した。

 広場の右手には噴水。

 左手には時計台。

 そして広場中央奥には、高台が築かれ、断頭台が設置されていた。

 見物人が100以上はいそうだ。

 そして断頭台には一匹のゴブリンの首が挟まれていた。

 時計台の時刻は11時55分。

 決行される時刻まで残り5分しかない。


「どうやって救い出すのだ」


 リシュアの問いかけに俺は全員を集めた。

 そして小声で作戦を伝える。


「ごにょごにょごにょ……」

「なるほど……」


 俺とリシュアとマリリンは身の丈をすっぽり包み込む、ローブを纏った。 

 そして俺とマリリンは人ごみを搔き分け、処刑台へと近づく。

 マリリンの眠り魔法の威力は有名だ。

 多くの見物人が眠りにつくようなことになれば、俺達が真っ先に疑われる。


 ならば賭けにでるかしない。


 俺のルーレットで時計台の広場にいる、処刑人もひっくるめて、尿意をもたらす。

 この場の全員が混乱し慌ててトイレへと駆け込むだろう。

 そして見物人どもが散り散りになった頃合いをみて、マリリンが眠り魔法を炸裂させる。

 その隙にゴブゴブを救出するのだ。

 この複合的な連続攻撃なら、疑われることもないはず。

 仮に疑われても、俺達、全員がローブですっぽりと全身を覆っている。

 顔は見えない。

 バレナイことを信じる他ない。


「姫様、寂しがらないでほしいべ。姫様の幸福、あの世で、祈ってるだぎゃ!」


 断頭台に首を挟まれているゴブゴブが、涙目で最後まで姫の無事を案じている。

 その叫びが俺の耳へと届いた。


 もはや俺は躊躇う事もなく、ルーレットスキルを発動させた。

 持てる限りの動体視力で、回転するルーレットを目で追う。

 当たりだけは引いてはないらない。

 石化や毒などを引いてしまっては大惨事だ。

 俺達までもがお尋ね者になりかねない。


 ンンやニャムに迷惑をかけられない。


 運否天賦などに頼ってられない。

 集中だ。

 ルーレットスキルの範囲効果は個体ごとでも範囲でもいける。

 要はイメージだ。

 今回は人が多いため、なるだけ効果範囲が広がるように、周囲の景色をイメージする。

 ――――今だっ!


 ルーレットに触れた瞬間、多くの者達が尿意をもたらし、慌てて立ち去っていく。

 徐々に広場は閑散となり、人気が失せていくのだが、さすがに処刑人や、守衛などは手ごわい。


 ――クッソ、やせ我慢してやがる。


 しかも交代でトイレに駆け込む算段なのか、二名の処刑人のうち一人と、三人いる守衛のうち二名がトイレへと走った。

 そして俺とマリリンも周囲を確認しながら、時計台の物陰に身を潜め、頃合いを見計らう。


「マリリンっ! 今だっ!」

「はいっ!」


 マリリンは返事をすると即座に呪文の詠唱。


「太古より眠り姫たる乙女よ。我との盟約に応じこの者たちを永遠なる夢見の時に封印せよ! 究極眠り魔法アルティメットスリープ!!!」


 処刑人一名。守衛一名が眠りについた。

 すかさず倒れ込むマリリンを俺は背負う。


 このタイミングでリシュアが、すかさず断頭台に走る。

 アリスはアリバイ作りのため、冒険者ギルドへとワープし、食事を4人分注文し、存在をアピールしてる頃だ。

 うまく全員が近くにいる雰囲気を、醸し出していてほしい。


 ルーレットスキル。レベルアップ。


 レベル2から3に上昇。

 習得能力が脳裏を掠める。

 新たに魅了を覚えた。

  

 もしやこれって、多くの野次馬どもにスキルを発動させたことによって、一気にレベルアップしたってことか?

 だとすると、レベルアップは割とちょろいのかもしれない。

 

 しかもレベルが上昇したことにより、ルーレットの回転速度が若干鈍くなっている。

 この調子でレベルを上げていけば、狙いも定めやすくなりそうだ。

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