14話「未知なる覚醒」

「ハジメ、もういい加減起きてよぉ」


 ――――ん? もう朝なのか?

 目覚めると桃色髪の美少女と、金髪の美少女が覗きこんでいた。

 あ、そうだ、あまりにもショッキングな出来事に出くわして、俺は不貞寝したんだった。


 髪を掻きむしり欠伸をした。

 

「どんぐらい寝てた?」

「たぶん15分ぐらいかな?」


 アリスが答えてくれた。


「あれ……そうなの?」


 その割には、一晩はガッツリと寝た気分だ。

 頭もスッキリしている。

 よく人生の三分の一は寝て過ごしてるって聞くよなぁ。

 

 これが昼寝スキルの効果なら、常人よりも時間を有効利用できるんじゃないのかな……?

 つまり毎晩徹夜でゲームしても、15分寝ればスッキリ全快。

 ヒキニートのゲーマーにはありがたいかも。

 けど腑に落ちないな。


 よし! 気を取り直し残りのスキルを試してみるか。

 まずは応援を使ってみることにした。


「アリス、リシュア、今から二人に応援スキルを使ってみる。何か感じたら教えてくれ」


 二人は快く了承してくれた。


「じゃあ、いくぜ!」


 途端、アリスとリシュアの表情が、緊張で固くなる。

 俺は応援スキルを発動した。

 そして白々しく、「おまえらがんばれ~」と、やる気のない声をだす。


 すると最初に声をあげたのがリシュアだ。


「ハジメ殿! これは凄い! やる気が全身から漲ってくる。このまま呪われていても、平気だと思えてきたぞ!」


 とまあ、こんな感じだ。


「アリスもハジメがスライムより弱くても、気にならなくなってきた!」


 ――――お、お前ら……。

 

 ともあれ応援スキルを発動させると、やる気が湧きおこりポジティブになるようだ。

 他力本願なスキルで素晴らしいじゃないか。

 さて、最後のルーレットも試してみるか。

 これが今ある中じゃ一番期待が持てそうなものだ。


 俺は二人に何も伝えず、ルーレットのスキルを発動させた。

 あれ? 何も起きない? 二人がちょっと光に包まれた気がしたんだが……。


 もしや、これこそゴミスキル?


「ところでお前達なんでムズムズしてんだ?」


 二人の顔が何気に赤く染まってる。

 ある意味、そそられる表情だ。


「ハジメ何かしたよね?」

「ハジメ殿、ちょっと失礼」

 

 二人が駆け足でトイレに向った。

 ――なんだよ、あいつら……。

 トイレ我慢してたのか。

 ……って何も効果ねぇのかよ!


 トイレから戻ってきた二人に俺は、またしても何も伝えず、再びルーレットを発動させる。

 

「ハジメ、また何かしたよね?」

「ハジメ殿、ちょっと失礼」


 二人がムズムズしてる。


「な、なんだか背中がかゆいよぉ~」

「かゆいところに手が届かぬ」


 アリスとリシュアが互いに背中を掻きながら、俺を睨んだ。

 …………な、何か起きてるのか?


「ちょ、ちょっと! ひっく! ハジメまた何かしたでしょ! ひっく!」

「ハジメ殿、ひっく! 悪戯が過ぎますぞ!」


 効果のほどがピンとこない俺は、再度ルーレット発動させていた。

 今度は二人とも涙目で、しゃっくりを繰り返している。


 そ、そうかっ! 

 このスキルは相手に何らかの、状態異常を発生させてるんだ。

 つまりデバフである。

 とはいえ、効果があまりにもくだらなくねぇ?

 けど、何が起こるか分からないな……。

 不用意に仲間に使うのはこれで最後にしておこう。

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