12話「ゲームのように転職ってのがあるようだ」

「バ、バカを申すなハジメ殿! あんな爆裂魔法、ダンジョンでぶっ放せる訳なかろう!」


 リシュアが驚いて立ち上り、丸テーブルを強く叩いた。

 俺達は冒険者ギルドでクエスト報告を済ませ、テーブルを囲み食事中だ。

 リシュアは俺が爆裂魔法しか使えないとは、思ってなかったようだ。


「――――ってことは……俺だけが戦力外通告ってことなの?」


 魔王を消滅させた爆裂魔法は、ダンジョン内で使える代物ではないとリシュアが力説する。

 生き埋め、窒息。その他もろもろ。

 

「ク、クッソー! なんて使えねぇクズ魔法なんだ……」

「あっ! ハジメ……今なんてった? アリスが授けたありがたい奇跡の魔法が、なんだって?」


 俺とアリスのやり取りを見てるリシュアが、溜息を漏らした。


「ところでハジメ殿。まだクラスチェンジをしてないと、お見受けする」

「――クラス? チェンジ?」

「冒険者はクラスチェンジして一人前となるんだ。とりあえずクラスチャンジするといい。即戦力とまでいかぬものの、レベルが上がると時期戦力となる」


 リシュアはエレメンタルマスターだし、アリスは天然女神だろ?

 よくよく考えれば元の世界と同様、俺は無職じゃないか。


「異世界人の俺がクラスチェンジすると、凄いことになるのかもな。今すぐクラスチェンジすっか!」

「ハジメ……クラスチェンジするアイテムは、とっても高額なんだよ」

「それってどんぐらい?」

「心配いたすな金なら、あたしがだそう」

「お、いいのか?」

「呪いを解くのを協力してもらうのだ。それぐらいお安い御用だ」


 リシュアに感謝しなくちゃな。


「だったらアリス。お前も何か職についたら?」

「え? わたし……? アリスはクラスについてるよ?」

「天然じゃなくて?」

「最近のハジメって露骨だよね」

「まあ……そう言うな。で、何についてんだ?」

「アリスはヴァルキュリーだよ」


 ――――え? アリスがヴァルキュリー? 嘘くせーな。

 ゲームじゃ女勇者の代名詞的な、花形職業じゃないか。


「……バカにしてるの? ハジメ?」


 脳内で呟いたつもりが、声にでてたようだ。


「な、なんと! アリス殿はヴァルキュリーであったのか! それは凄い!」


 リシュアが息巻くほど驚いている。


「あ、いえ、それほどでもないんだよ」

 

 アリスが照れた笑みで謙遜している。

 

「では、アイテムを買ってくるので待っていてくれ」


 リシュアが席を立つとアリスは俺をギッと睨んだ。

 

「まあまあ、そんなに怒るなよ」

「いぃーだっ!」


 ともあれ冒険者ギルドで、クラスチェンジ用のアイテムは売ってるようだ。

 アリスは少々不貞腐れたと思いきや、テーブルに肘を付き真剣な目でじーっと俺を見つめる。


「念のために言っとくけど、ハジメは間違ってもウィザードとか選んだらダメだよ?」

「わかってるよ……俺は魔力ゼロなんだろ?」

「たーんとわかってるならいいよ!」


 リシュアが戻ってきた。

 占い師が使う水晶玉みたいなものを、手に持っている。

 

「これを使うのだ。ハジメ殿の才能に適した職が浮かびあがる」


 俺はリシュアから、そーっと丸い玉を受け取った。

 テーブルに置き全員で玉の中を覗きこむ。

 玉の中に文字が浮かび上がった。

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