第35話 露天風呂に入る

 ひとしきり大暴れしてお腹空いた!

「拓海お腹空いた!」

 実はギブです。水の中じゃ全く敵わないよ。いや、地上でも無理だけど。

「じゃあ、飯にしよう」

 フワフワごとプールサイドに運ばれる私。あれ? はじめからこうしろ! なんでさっき私の体持って運んだのよ!

 水から上がって体を拭いてから、あ! 着替え? どうしよう部屋に行くのかな? でも着替えここに持ってきてるしな。だからって、ここじゃ着替えられないし……。

「俺が昼飯をここに持って来るからそのまま勉強して待ってて」

「あ、うん」

 水着姿に腰にタオルを巻いて拓海は別荘の中に消えて行く。拓海……タオル持ってたっけ? 何時の間にか!? あ、フワフワの時に一緒にそういえばタオルも持ってた。


 勉強かあ。……疲れてお腹減ってたら無理だよ。


 参考書を開く間もなく、拓海がお盆を運んできた。

「早くない?」

「昼ご飯は作ってもらってたんだ。だから持ってきただけだよ」

 だよね。早すぎるよ。見ると美味しそうなサンドイッチ、お腹の減ってる私は開きかけた参考書を素早く片付ける。


「いただきまーす」

 とさっきの管理人さんに感謝しつついただく。

「美味しい!」

「昔シェフやってたらしいよ。いただきまーす」

 と拓海もいただいてるけど……拓海は何者なんだよ? ますますわからない……お金にも困ってそうじゃない……金持ちのなんチャラ争い? それにしては影ないけど。とにかく苦学生になることはなさそうだな。


 その後は満腹なお腹を抱えてプールには入れないので真面目に勉強開始。まあ、すぐに拓海がプールに飛び込んで水遊びになったけど。ボールがあったり水鉄砲があったり遊び道具がどんどんどこからか出てくる、そしてすっかり童心にかえる私達。いいのか受験生!


 *


「そろそろ風呂入ろう。晩飯は作らないといけないしな」

 ええ! 断らなかったら元シェフの管理人さんのご飯がいただけたのに! ってわがまま言ったらダメだね。

 体にタオルを巻いてお風呂場へ。うお! 男風呂と女風呂に別れてる! なんで一緒にお風呂場へ? と思ったらそういう事か。

「あ、樹里! 露天風呂は混浴だからな!」

 えー? え! 混浴って……。

「えー?」

「奥にあるから、水着を着たまま来たらいいから。じゃあ、待ってるから」

 着替え持って来いの意味がしみじみわかったよ。水着が二着必要あるかもってのも。お風呂にも水着を着用する為だね。

 女風呂に入ってバスタオルと着替えを置く。バスタオルはプールのとこに私用にも用意してあったので、風呂上がり用にと持ってきた。まさかお風呂も一緒なんて。まあ、そうだよね。露天風呂二個も作らないよね。普通。って普通は別荘やらプールやら露天風呂などないんだけど。

 お風呂場の扉を開けると、シャワーだけがあった。メインの露天風呂入らせる構造だね。シャワーをとりあえず浴びておいて、いざ、奥の扉を開ける! うわー! いちいち、うわー! な別荘だね。よくテレビで見るお部屋にある露天風呂! っていう感じで小さいけど雰囲気たっぷりな露天風呂が目の前にある。そこにもう入ってる拓海。早っ! そこから見える景色は森。すごいよこれ!

「よお! 遅い! 早く入りなって!」

 勧めるねえ。なんだろ? 乳白色な露天風呂なので拓海が水着を着てるんだろうけど上半身しか見えないから緊張しちゃうよ。水着着てるようには見えないんだから。

 拓海の隣に


 チャプン


 と入ったけど、私も裸に見えない? 肩の水着のライン見なかったら。う、これってめっちゃ恥ずかしい。なぜ? プールの水からお湯に代わり、透明から乳白色になっただけなのに!!

「アリス、恥ずかしがり過ぎ! さっきと変わらないのに」

 ニタニタ笑うな! 恋する乙女にこれはキツイぞ! ばかやろう!

「なんか……だって、お風呂ってないでしょ? 普通!」

「まあな。なあ、俺が裸だったらどうする?」

「ひぇぃ?」

「バーカ。冗談だよ」

 拓海爆笑してるよ。全く人をからかって遊ぶのが好きな男なんだから。

「もう!」

 と言いつつまだ胸のバクバクがおさまらない。この乳白色のお風呂め! めっちゃいいお湯だけど、恨めしいよ。

「樹里、真っ赤なままだけど……大丈夫か? もうのぼせた?」

「あー、そうかもしれない。もう出るね」

 本当は違うけどこれ以上のからかいには耐えられないよ。

「あー、じゃあ、キッチンの冷蔵庫に冷えたジュースとかいろいろあるから飲んでて」

「あ、うん」

 意外にあっさり解放してくれた。そんなに赤いの私?

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