第32話 準備する

 こうして、軽井沢の拓海が所有するのかなんなのか、別荘に行く事になった。期間は十日。暇な受験生の私達の勉強時間だと思ってるけど……拓海の嬉しそうな準備の仕方を見てたら完全に遊びだって気付こうよ、父も母も!

 私の準備は買い物から。しばらくプールにも行ってない。水着は絶対だと拓海に言われるまでもなく、プールいい! 学校の授業は嫌だった……ちなみに高校にはプールそのものがない。近いとプールがないがこの高校を決める決め手だったぐらいだけど、バシャバシャ涼む程度に入るプールは最高! 想像しただけで涼しい! あ、今買い物に行く電車の中だから涼しいんだけど、本当に。


 *


 さて、水着売り場に久しぶりに来た。いろいろ目を奪われては、着ている自分を想像して却下していく。拓海はずっとそれはないっていう、なかなかないビキニや肌の露出が多い水着をどこからか探して持ってくる。拓海! 少しは恥ずかしがりないさい! 水着売り場でなんで男子がイキイキしてるよ拓海!

 久しぶりの水着の買い物、迷うなあ、可愛いのいろいろあるし。迷ってる私に

「樹里、二着あるといいぞ!」

 どれだけプールにいるつもりなんだろう? しかもいる、二着も? 着替えてまた着るってことか。勉強そっちのけだね。もしくは水着で勉強か。焼けるの嫌だな。日焼け止めもいるな。

 ようやく決まった二着。二着も本当にいるのか?


 水着購入したので移動しようとしたら同じフロアに浴衣売り場があった。そちらのほうへ拓海が私を引っ張って行く。

「樹里! 浴衣!」

「え? 浴衣?」

 浴衣ってなんの遊びの延長だよ。

「花火って言ったら浴衣だろ?」

 ああ、花火か。持ってってするんだね。いちいち浴衣に着替えるの? 花火って言えば浴衣だけど、袖……危なくないか火が!

「ええ。わざわざ……」

「いいから見てみようよ」

 浴衣売り場に連れ込まれました。可愛いな、やっぱりずっと着てなかったから、余計だろうな。あれって、中三の夏休みだったな。類と花火大会へ行くために買ったんだった。あれは着たくない。いい思い出じゃないもん。

 そう思うと真剣に浴衣を選んでしまう私。拓海もなんでだか一緒に選ぶ。浴衣の形には変化ないんで、ここでも好みが出てくる拓海。可愛いのが好きなんだね。水着は露出だったけど。

 可愛い浴衣を選んで決める。帯と頭の飾りまで本格的に私に着せる気だね、拓海。下駄や何かは家にあるのでパス。


 *


 はあー。買い物楽しいけど疲れるよ。さっき水着購入途中でお昼ご飯だった。拓海の露出の多い水着選びに却下していかなきゃいけないし、拓海がいるので気恥ずかしくていいのがあってもなかなか試着できなかったから、時間がかかったせい。

 今度は涼みと休憩に甘い物食べに入る。久々にパフェ! はあー。疲れがとれるよ。あー美味しい。拓海もなにやらアイスを浮かべたソーダをいただいてます。可愛い。


 *


 そんなこんなで無事に帰宅。

「拓海はいらないの?」

 と何度か聞いてみると俺はいいという答え。持ってるってことかな? まあ、水着は持ってるよね。二着だって私に言い張ってるし。浴衣は怪しいな。私だけかな?

 まあもう体力の限界なので買い物は終了した。明後日までに荷物詰めないと。なにせ十日だからね。洗濯も出来るし自炊だそうだからそんなに荷物もいらないだろうって思ってたけどドンドン荷物が膨らんでいくんだけど。そして、今日の水着&浴衣セット。かさばるよ! 帰ってすぐに自分の部屋にこもって荷物詰めてると


 コンコン


「はーい」

 と拓海が入ってきた。おっとなぜか水着隠しちゃうんだけど。

「なに?」

 拓海はカバンに無理やり詰め込んだ水着を握りしめてる私に紙を渡す。片方で水着を押さえつつ受け取ると、そこにはリストがあった。バツとか丸とか三角の印付きで。

「なに? これ?」

「バツは向こうにあるってもので三角もあるけど気に入ってるのがあれば用意すればってので丸はないんで持ってきてってリスト」

 拓海、結構マメだし細かいとこまで。まあ、私が知らないから教えてくれてるんだね。

「ありがとう」

「あ! あと一応勉強道具もな! 言われるかもしれないからな」

 きっと父にだろう。一応あの会話気にはなってるんだね。って一応しか勉強しない気だね。もうすでに。

「そうだね」

「じゃ俺も用意して飯作るな!」

 と去って行く拓海……ちらちらバックの水着を見てた? 隠したから気になるよね。水着の試着も拓海に見せたくせに、なぜ隠すんだろう私。

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