蒼き瞳のマスカレード

水硝子

第0話 平和

四重奏カルテット。今度は失敗するなよ」

深い翠色の二部式着物を身に纏い、藍色の髪をやや揺らし指をさす方向には、やや明るい藍色の浴衣をシンプルに着こなす女性。

黒の長い髪が月明かりに照らされ美しく輝きを放つその姿は、「the 日本人」というような雰囲気を纏っている。

「分かっている。それは輪舞曲ロンド、お前もだろう?」

その姿からこぼれた声は、男性とは対照的で、凛としていて勇ましい。

いや、男らしいと言ったほうがいいのだろうか、

「ハッ、言ってろ。覚悟は決めたんだ」

目の前の女性の目を見据え小さく息を吐き切れば、さし伸べてられた手の甲に重ねるように手を置く。

「…そうか、ならいい。行くぞ」

互いに目を見つめ合い、小さく頷けば、目を瞑り、息を大きく吐く。

そして、互いの願いをゆっくりと紡ぐ。

「この世界を終わらせるために」

「この意味のない戦いを終わらせるために」

目を開き、見つめる先には想像する世界が広がっているかのように、彼、彼女は同じタイミングで口を開いた。


『この手に。狂想曲カプリッチオ


その言葉に反応するかのように重ねていた手に光が宿る。その光は暖かく、触れたら熱い。

そんな光は、徐々に二人を包み込んでいく。

包まれていく感覚は、まるで母親に抱かれたときのようなほのかに暖かく、落ち着けるもので。

それに包まれていく二人の表情は、笑っていた。


――願わくば、このまま終わり、何事もなく平和に……。

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