第22話 『お供』

 「大魔の呪いが……壊された…」


 俺が抱きついているのも気づいていないのか驚いたようにして一人言を喋る風竜。

ってかお前喋れたのか。


 「この呪いを破壊したのはお前か?」


 あ、多分俺だわ、というか呪いも消せるんだな、俺スゲー

 …違うそうじゃない。


 「そうですが……何か?」


 いや「何か?」じゃないんだけどな、そもそもこいつ昔滅茶苦茶してたみたいだし警戒は解くべきじゃないだろう。


 「ふむ……人間のくせに魔力が感じられんな」

 「悪かったですね」

 「いや、これは……神の気………?」

 「お前が何を言っているのかは知らんけど……人里に手を出すならひいてくれる

  かな」


 精一杯怒気を含めて発言する、こいつの言っている言葉の意味は理解できないが倒すべき相手であることに変わりはない。


 いや倒せないんだけど。


 「もとより手を出すつもりなどないが?」


 ほら、やっぱり敵だ。


 「……………………は?」


 待て今なんつった? 「もともと手を出すつもりなどない」? 何それ俺めっちゃ恥ずかしいじゃん。


 「……大昔に大陸を火の海にしたって聞いたんでだけど…」


 そう聞くと一気に暗い表情になる風竜、やはり事実なのか?


 ……やはりとか恥ずかし。


 「……確かに私はこの大陸を人の住めぬ地に変えた、しかしそれは私の意思では

  ない」


 言ってる言葉の意味が分からない、言い訳なら小学生レベルだ。


 「私がハクマの地にいた時、教帝の大魔導師部隊に一種の魔法をかけられて

  な……私の意思を無視してこの大陸を地獄に変えたんだ……もちろん油断

  していた私が悪い、申し訳ないとは思っている」


 どうやら神話は本当だったようだ。


 しかし……ここはどうすればよいのだろうか? こいつの言っている言葉が本当だとしても大罪人……いや大罪竜であることにかわりはないのだが、俺にこいつを倒す術はない。


 ここに来た目的、それはトライル達の居る村をこの風竜に襲撃させないため。


 …………なら取るべきこうどうは如何にして襲撃させないか。


 しかしこいつは既に攻撃する気はないらしい。


 なら逃がせよって話なのだがそれはそれで襲撃の可能性が出てきて安心できない。


 「おい、お前」


 人が考え事をしている時に話しかけてくるとはいい度胸をしているじゃないか。


 「お前についていってもいいか?」

 「は? 別にいいよ………………………………え?」

 「人間に懐いている竜など脅威として扱われぬであろう? もっともお前の居場所

  がなくなるなら無理強いはしない」


 ……突拍子もないことだがチャンスでもある。ここで仲間にしたら村への脅威は減るだろう。

 

 だが同時に俺の居場所も失われるかもしれない。心はともかく実際かつて大陸に住まう人々を大虐殺したという事実は消えない。そんな存在を連れて帰ってみろ。俺の居場所は間違いなく消える。神奈の居場所まで奪ってしまうかもしれない。


 もう一度考えてみる。俺がここに来たのは何のためだ? 恩人の命を守るためだろう。なら……


 「いいぜ、ついて来いよ」

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