第21話 『破壊』

 風が冷たい

 

 俺の身長を遥かに超える木々は月明かりさえも遮り


 俺に絶え間なく孤独を与え続けてくる。


 ふと下を見下ろす。


 そこには昼とは違う村があった。


 俺、森海 霊彦たまひこがここにいる理由はただ一つ、風竜から村を守る為だ。


 正直俺に何かができるとは思わない。というか思えない。


 でも風竜とかいう奴は普通魔法攻撃しかしてこないようだ。


 ホントに俺に魔法が効かないのかは分からないけどやる価値はあるだろう。


 どうせ何もせずに大陸ごと殺されるぐらいなら男らしく正々堂々戦いたい。


 まぁこれが正々堂々というのかは分からないけど。


 夜、皆が寝てからこっそり出てきたし朝は大騒ぎになるかもしれない、ほんと度々すいません……


 一応役に立つかは分からないけど祭具一式の入った袋は持ってきた。


 この世界では魔法が普通に存在するんだしなんか神の力もありそうだなって言う浅はかな考えからだけど今更後悔はしていない。


 服装はばっちし狩衣、不覚ながらちょと気に入ってしまっていたりもする。


 ……というか今更なんだけどさ、風竜って山の向こう側らしいんだよね、しかも大陸をまたがる山脈のどこかは分からないらしい…………あれ? これってかなり無謀なんじゃ……


 そんな時幸か不幸か巨大な咆哮が聞こえた。


 「!? あっちか……」


 これが風竜のものかどうかは分からないけど今は行くとしよう、熊とかでたら終わりだけど。


 ………………いた。


 まさにおとぎ話ののドラゴンという形の生物が首を振りながら咆哮をあげている。

 周りには中世ヨーロッパの騎士を彷彿させる姿をした人物が数人いる。しかし怖いのか恐怖に顔が歪んで動けていなかった。


 「キシャアアアァァァァァアァァァ!!!」


 近寄るとやっぱり気付かれた、でも何故だろう、怖いと感じない。

 俺がおかしいのかもしれないが一瞬風竜が可哀想……というより泣いているように見えた。これも魔法なのだろうか。


 「ギィギャアアァァァ!!」


 俺の方に向かって巨大な火の玉を飛ばしてくる、バンのものとは比べ物にならない。思わず目をつぶる、しかし衝撃はなかった。


 「……やっぱり」


 どうやら本当に魔法が効かないようである。

 しかし風竜の猛攻は止まらない、次から次へと火の玉や暴風が襲いかかってきて攻撃が効かないとはいえ視界が奪われる。


 「う…………」


 少しずつ、しかし確実に体力が奪われていく、このままでは少し蹴られたら死んでしまう。だから俺は風竜の死角に回ろうと背中に周り風竜に蹴られないよう抱きついた。


 ドッッガッシャァァァァアン!!!


 途端、今まで聞いたことないような轟音が鳴り響く。それはまるで重厚な壁をでっかい金槌で叩き割ったかのような音だった。

 風竜の攻撃かと思い抱きついている風竜を見る。そこにあったのは……


 「大魔の呪いが……壊された…」


 驚愕の表情(らしきもの)を浮かべた風竜だった。











 ……………………いや驚きたいのはこっちだよ。

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