第18話 『諜報』

 レータル王国王城地下


 一箇所を除いて暗闇に包まれた密室で二人の男が話をしていた。


 「例の人間族は見つかったか?」

 「いえ、未だに……しかし驚く事がありました」

 「驚く?」

 「隣国、ギャラドの大樹の森にバンが現れたようです」

 「なっ!! バンが!? ……もし森をぬけ我が国に来たときは対応できるか?」

 「全く問題ありません、我が国の精鋭部隊の前にはバンも倒せる敵です」

 「うむ、それは心強い、これからも頼んだぞ」

 「はっ……」




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 ヘートガルタ大帝国


 壁に飾られた水晶の発する光に照らされた男女数名が会話をしていた。


 「ギョルカへの援軍はどうなっている?」

 「最新鋭の大砲を50も送っております」

 「最新鋭のものを預けて大丈夫なの?」

 「問題ありませぬ、大砲として最新鋭ですが我が国にはそれを上回る兵器がござ

  います、それに万が一反乱をおこしたところで国を潰す言い分に出来るだけで

  す。」

 「それは心強いわ……昔からギャラドは嫌いだったのよ、醜い羊脚族がうようよ

  いる、列強へートガルダ大帝国の前に潰される運命だったのよ」

 「全くでございます。羊脚族など忌々しい……」

 「…そうね、…ゲーべ」

 

 ゲーべと呼ばれた男が女の方を向く。


 「更に援軍として200のグリフォンを送りなさい」

 「200ですか? 100でもギャラド程度潰せると思いますが……」

 「ものは慎重にね、万が一があってはならないわ。それにこれだけのグリフォン

  を当たり前のように送ればギャラド以外の国もへートガルダを恐れること

  でしょう」

 「なる程……畏まりました」


 不穏な会話は続く……





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 ギョルカ王国王城 謁見の間


 謁見の間の赤い絨毯の続く先にある最も高い場にある金色の椅子に座る銀髪の30代程の男、ギョルカ王国現国王、『サーム・カパル・ギョルカ』は大臣をあつめて戦勝パーティーを開いていた。


 「皆の者! いよいよギャラドが我が国の一部になる時が来た! 忌々しき羊脚族を

  根絶やしにし果てはカララ統一だ! 今戦いには列強へートガルダも我が国に味

  方し、小国ならばいとも容易く潰す大砲50基と天の支配者グリフォン200頭を預

  かっている! 我が国の勝利は確実、よって今より戦勝祝賀会を開く!」


 随分とお手つきなパーティーは続く……




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――



 カンナル山脈龍脈の源


 「グルルルルル……」

 「風竜が目を覚ましたーー!!」

 「魔伝で報告だ!!」

 「急げ!」

 「グルガギャアアアアァァァァアァ!!!」

 

 3000年のカルルの地の平穏は一夜にして破られた。

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