第5話 『第二の人生』

 そして現在へ至る……




 「…………」


 俺はただ呆然としていた、それも仕方ないって言わせてほしい。神社の中に居て周りが見えなくなって床も消えたと思ったら『異世界』とも言える、いや、世界が現れたのだ、呆然としないほうがちゃんちゃら可笑しい。

 

 この手の小説ライトノベルだと「俺は異世界に来てしまった……ん? …音がする……エ!! メガミサマ!!?」って感じの展開だけど実際はそんなこと起きることはなく。


 ガサ……ガサ……


 近くの草むらから音がする、猪の類かもしれないので警戒して一歩後へ後ずさる。


 しかしそこから出てきたのは猪などとは間違っても呼べないほど弱い存在だった。


 「神…生……?」


 そして俺が草むらから出てきた幼馴染の名前を呼ぶと一瞬インコの様に口を開けて驚いたような顔をしたあと物凄い笑顔になって駆け寄ってきた。まぁいつものことである。違いと言えば何故か安心感を覚えるところだろうか。


 「よかった!! タマもいたんだね、私だけかと思って……」


 そういう彼女の顔はどこかやつれている、かなり混乱していたのだろう、いつものような溢れんばかりの元気がない。


 「……神生」

 「ん? 何?」

 「お前もか……」

 「え?」


 俺がこんな意味不明な事を言ったのには勿論理由がある。その理由とは『服装』である。今のコイツの衣装は巫女服、つまり気を失う前の服装なのである。


 と、いうことは勿論……


 「あ、タマもその服装なんだ、かわい……似合ってるよ」

 「うるさい」


 そう、俺も狩衣姿だったのである。幸い手に持っていたもの……祭具一式の入ったカバンと着替えはもっていたが森の中で、しかもいくら幼馴染とは言え異性がいると分かっては着替えにくい。むしろ堂々と着替えたらいくら見えない場所にいたとしても結構引くな、俺だったら、…うん。


 「ねぇ、なんか面白い……って言ったらいけないのかもしれないけど、どうせこん

  な事になったんだしこの格好で歩こうよ、誰もいないんだしさ」


 まぁ神生の言うことにも一理あると思ったのでそうすることにした。しかし……最悪人がいない可能性もある。が、気にしても仕方ない。


 「そうだな、じゃあ行くぞ」

 「うん!」


 俺はあの馬鹿でかい荷物をもって、神生は気に入ったのか大幣だけ持って下山、もとい人探しを始めた。


 

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