works/1177354054880281405

『春先のトリック。自殺か他殺か…。』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880281405/episodes/1177354054880281416


 謎解きミステリで伏線やとぼけた日常会話が発展したのは、それが謎解きに必要だからというより、それらが致命的に再読に向かない為であった、とする説がある。

 奇術師が同業者の舞台を見る時、現象への興奮よりも、その応用と手際に賛辞を送るものだ。種の知れた推理小説を再読するのは難しいし、傑作であればある程、糸にせよ蝋燭にせよ氷にせよ足跡にせよ時刻表にせよ、後の作品にトリックを流用され、後世では陳腐化してしまう。それはSFに於いても同様なのだけれど、だからこそ、SFと推理小説は、副次的な要素をその他のジャンルよりずっと高めなければならなかった。何故なら、作者も編集も再読できない小説は、推敲することすら出来ないのだから。ジャンルの強度と鋭さを捨ててまで、そうせざるを得なかった。

 ジャンルが強度を失ったのであれば、作家がそれを担えば良い。人はそういった強さに惹かれる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る