永遠(とわ) 桜咲く月夜

 月光商店街では桜は咲くものではなく、降るものなのです。


 月に桜はありませんからね…。


 みんなが地上から桜の花びらを少しだけ持ってきます。

 皆が持ち寄った桜の花びらを大きな『弾け星』に詰め込むのです。

『弾け星』って…コンッと叩くとポンッと弾けるお星さま。

 知らずに叩くと、ビクッとなります…そのあとドキドキします。


 でも…時々、チョンッと突いてみたくなるお星さま。


 でも…運ぶのは難しいので、運ぶのは『星の加工場』で働くねこ達。

「おうおう、弾けさせるんじゃねぇぜ!ビクッとならぁ…優しく…優しく運ぶんだぜ…特にチッコイの…オメェはやらかしそうだぜ…」

 親方がチョビさんの心配をしてます。


 クロさんとチョビさんは『星の加工場』でお手伝いです。

「そう簡単に弾けないよ…ねぇ」

 チョビさんがクロさんの方を振り返ると、クロさんが持っていた『弾け星』とコチンッとぶつかり、ポンッと弾けます。

「うわぁ!」

 ほらね…ビクッとなるんです。


 なんとか『弾け星』を運び終わって、後は皆が持ってきた桜の花びらを待つばかり。


「チッコイの…いくつ弾けさせた?」

「ん?わからん…いっぱいだ」

 お昼ご飯に『カツオにぎり』を貰って、皆で食べています。

「チョビさん…運んだ星より弾けさせた星の方が多かったよね…」

 クロさんが、呆れています。

 チョビさんは笑っています。


 食べて、お昼寝の時間…日向で柔らかい日差しを浴びながら皆でゴロゴロしてグルグル鳴いて眠ります。


 桜の花びらがドンドン集まって、大きな球に花びらと弾け星を上手に詰めて…夜になって…いよいよ空に打ち上げます。


 大きな筒に、大きな球を入れて、空に向かって…3・2・1…ボヨーンと空に打ち上げます。


 空でポ~ンッと大きな音が響いて、皆がビクッとなった後…街に桜の花びらがヒラヒラと舞い散る様に…踊る様に…落ちてきます。


 黄色いお月様に照らされた夜空に、桃色の花びらがフワリ…フワリと舞っています。


「クシュンッ」

 チョビさんの鼻を花びらがヒラリとくすぐりました。


 クロさんが食べているマグロソフトクリームに花びらがピトリと、くっ付きます。

 皆、笑って…皆、遊んで…毎日がフンワリ流れていきます…。


 ここは猫の街…お月様が見守る『猫の街』。


 …………。

 ムムムーっとユキの足元でチョビが前足をクニクニ動かします。

 お腹を出してクロさんがユキに腕枕されてチロッと舌を出してクークッと眠っています。


「今日は何の夢を視ているのだろうね…」

 ユキが2匹を交互に撫でます。


 窓には黄色い月が浮かぶ…春先の夜…。

「いつまでも…僕の傍で…」


 いつでも…いつまでも…猫の街で遊んで…ユキと眠って………。


                 『猫が解決 探偵事務所』 おしまい。

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猫が解決 探偵事務所 桜雪 @sakurayuki

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