真実の口5

その電源を落としちゃう作戦に味を占めた私たちはそれを他にも応用するようになった。

投入したメダルで中にひしめくメダルを直接押し出して取り口へ落とすゲームでは、その性質上外部からの強い揺れに対し警報アラームがなる仕様になっていたが、電源を落とすことでアラームの作動を防ぎ機械を直接振り揺らし強引にメダルを落とせるようにした。

機械を無理矢理に揺らす様はまるでレイ◯モノのAVを連想させる、なんてことを当時の私は思ってないよ。


その際、じゃらじゃらと物凄い音をゲームセンター内に響かせることになるため、係員や周りの大人の目に最善の注意を払わなければならない。私たちは作戦時にはサッカーの時さながらにフォーメーションを組んでゲーセン内に散らばり、『誰もいないよー』の合図をパスして繋ぎ、監視の目を掻い潜ってやった。

私たちは中学校に上がってからサッカー県大会で準優勝という結果を残すことになったのだが、もしかしたらこの時に培われた必死の連携作業が活かされているのかもしれない。そんなわけはない。


そうやって色々悪さを働き(このあたりで、私は例の真実の口に挟まれた)、スロットやルーレットなどどんどん他のゲームも攻略していき私たちのメダル所持数が全員合わせて10万枚近くになった頃、とうとう警察へ通報された。

まあ小学生のイタズラということで厳重注意、運よく警察に捕まることはなかったけどそれからゲーセン内の警備はいっそう強くなり、以前のような荒稼ぎはできなくなった。

警察に注意を受けて流石に私も友達も懲り、それから悪事を働くことはなくなった。



なんてことは、まるでなかった。



悪知恵とどまること知らず、近日、私たちは別の『真実の口』を見つけた。それは学校の近くにある白いダ○ドーの自動販売機だった。

部活後、私たちは二つ上の先輩たちに引き連れられ南門前にあるその自動販売機に集まった。

辺りを注意深く見渡し、「ちょっと見てて」と言い先輩が取り出し口の下から上に向かって器用に腕を入れ込むと、どばどばどばっと物騒な音をさせながら缶ジュースがメダルのように流れ出てきた。

その数およそ20本。ざわめく。

「これ、やばくね」なんてことを落ち着きなく繰り返し私たちの一部は異様な盛り上がりを見せていた。

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