最終話 それなりのHE

「おババ、退院おめでとう!」


 ㅤクラッカーなんか使っちゃった。お父さんが車で迎えに行って、ワタシとお母さんが、玄関先で待ち伏せしていた。


 ㅤこれが原因で心臓痛めないかとか、思っちゃったけど、とにかく祝福の紙テープを浴びせたかった。お父さんにもかかっちゃったけど。


「ありがとうねぇ」

 ㅤおババは嬉しそうに微笑んだ。結局、あれから星の人についての話はしていない。あまり話すものでもないと思うんだ。おババの胸の中に、大事に仕舞われていたら、それでいいよ。


「こんにちはぁ!ㅤマァちゃん、いますかぁ!」

 ㅤエ。マァちゃん?ㅤ今度はどのマァちゃんだよ全く——。どなたですか?


「ミヤちゃんです! ㅤワタシたち、結婚することになりましたぁ!」

 ㅤ扉を開けたらそこにはミヤちゃんと木崎くんの姿が。なぜか白いドレスとタキシードを着てる。


「エ、結婚式もうやっちゃったの?」

「違うよ、マァちゃん抜きにやるわけないでしょ。帰ってきたって言うからレンタル借りて飛んできちゃったの。どう、似合う?」

「でもそれ、式で見せてくれたらよかったんじゃないかな」

「あっ、そうかぁ。失敗!」

「ほらだから言ったでしょ」

「うるせぇ、お前が言うなコラァ」

 ㅤミヤちゃんが木崎くんを腹パンした。木崎くんがうぐぐとうずくまる。

「コイツさぁ、浮気しやがったんだよね。ミヤという女がいながら。でもぉ、そんな度胸あるのはなかなかやるなって思って」

「でしょ、でしょ」

「だからでしゃばるなって言ってんだろコラァ!」

「ぐはぁっっっ」

 ㅤミヤちゃんと木崎くんは、相変わらず仲良しみたいです。


 ㅤこんな感じで、それぞれの物語が、それなりのハッピーエンドを迎えようとしてるけど、ワタシからも発表があります。ワタシ、就職先を決めました。それは、ちょっとありがちな流れかなと思うけど、手紙配達人です。宇宙を飛び回って、それぞれの人の大切な想いを、届けて回りたいです。もう星の人みたいな思いはさせないで、何十年と時間がかかることなく、速達の速達で、だけど味のある手紙を、皆さんの元へお届けしたいと思います。


 ㅤそんな発表をお家の居間で、お母さん。お父さん。おババ。ミヤちゃん。木崎くん。そしておジジの顔写真の前でしました。そしたらおババが、ワタシの耳元で、他の誰にも聞こえないようにささやいてきたのです。


「手紙の返事、送ってもらおうかしら」


 ㅤいたずらっぽい笑顔を浮かべたおババの表情は、とっても元気で、首元にはいつもの青い、丸型のペンダントが輝いているのでした!


 ㅤおしまい!



「おーい。オレの出番は?」

 ㅤ宇宙でまた、会えたらいいね。

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