第27話 作者都合の闇

 ㅤどうしてワタシは、これまで、考えもしなかったんだろうと思う。


 ㅤ宇宙空間を包む、大きな暗闇が、ワタシの邪魔をしていたんだろうか。


 ㅤこれまで、手紙をもらうことに、たいした疑問はなかった。星の人が誰なのか、どこにいるのか、どうしてワタシのことを知ってくれているのか。そんなことばかりを考えていた。


 ㅤそれよりも、どうして手紙なのかということを考えた方がよかったかもしれない。今は発展した時代だ。うんと発展した時代だ。言葉のやり取りなんて、遠く離れていたとしても、手紙でする必要はない。


 ㅤなのに、なぜ手紙なのか。手紙なんて、今となっては最も不便なものと言えるかもしれないのに。

 ㅤだんだんワタシの中で、見えてくることがあった。


うちに帰らなきゃいけないかも……」

 ㅤ宇宙船を動かしながらも、少し下を向いてボンヤリしていた。それがいけなかった。こんなことがありえるのかって話は、したらキリがないので、目をつぶってもらうことにするが、ふと前を見るとまだ若干距離はあるものの、ブラックホールの存在が目の中に飛び込んできた。

 ㅤヤ、ヤバイ。息をむ。こんなときは、教習所の教えを思い出せ。


「飲んだら乗るな。飲むなら乗るな」


 ㅤ違う違う! ㅤ乗ったら見るな。乗るなら見るな。だ。よし、思い出せたぞ。

 ってこれ思い出したからって何やねん!ㅤ もう見ちゃったんですけど。ああ、ヤバイ。このままだと吸い込まれて何やかんやされてしまう。

というかすでに、勝手に操縦が取られているような気が……。だめだめ。まだワタシ何もしてない。目をそらすんだ、目をそらしてちゃんと操縦するんだ!


「えいや!」


 ㅤいつかのイバルくんを思い出して、宙返りをコマンド入力!ㅤ もう無我夢中。何回回転してるかもわからない。とにかく、目の前に黒い穴がなくなるまで、何度でも回る。逃げる。とにかく必死に。

 ㅤああ、頭がクラクラする。どれだけ回ったかわからない。もう、こんだけ抵抗したんだから、仕方ないや……。


 ㅤほぼ無意識の中で、一番最初に星の人からもらった手紙をカバンから取り出す。


 ㅤごめんね、お母さん。お父さん。おババ。そして星の人。ワタシもう、ダメみたいだあ!?


「まぶしっ」


 ㅤ思わず封筒を床に落としてしまった。そのオモテ面には、星の人が書いた「マアちゃんへ」の文字と家の住所。それと、ワタシが付け加えた「一」の文字。一通目という意味。でも、そのウラ面には、何も書かれていなかったはず。


 ㅤでもそこが確かに、光ったんだ。拾い直して改めて見直す。そこに突然文字が浮かび上がった。

「ナニコレ、住所?」

 ㅤさっきから危険なよそ見運転をしてるワタシはまだ気づいていなかった。


 ㅤ目の前に、六つ目の星が迫っていることに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る