ランナー・オブ・ザ・デッド

赤間

第1話 7:29

「時間だ」

 手錠を外される。

 しゃがみ込んで靴ヒモを固く結ぶ。

 背後の二人をぶん殴って逃げてやろうかとも思ったが、勝ち目が無いのでやめた。


「出ろ、罪人」

 俺――ブラス=ロクはそいつらによって、開いた鉄門から外に追い出される。

 背後で門が締まり、鍵のかかる音がした。


「また会おうぜ兄弟! ゾンビになったお前を見つけたら、俺が殺してやるよ!」

 門の向こうから下らない野次が飛んできた。

 俺がゾンビになったら真っ先にあいつを殺してやる。

 息を付き、顔を上げる。埃っぽい空気のせいで鼻がかゆい。

 周囲には、あの女が言った通りゾンビの姿は無い。


本気マジで、やるのか?」

 俺は耳に詰めたインカムから、その女に問いかける。


『本気よ。あなただって死にたくないでしょう?』

「……大通りまで出て北に向かえばいいんだな?」

『今のところはね。ゾンビ達の動きに合わせて私がナビするわ』


 唾を呑みこみ、もう10回以上はした確認を再度行う。

「2日間逃げ切れば、『城内』に戻れるよう計らうってのは本当だろうな」

『当然よ。あなたこそ、ちゃんとすべき事を分かってるんでしょうね』

 インカム越しの女は淀みなく、何度も聞かされた俺の仕事を読み上げる。


『探索部隊の作業終了まで、ゾンビを誘導して安全を確保する事があなたの仕事よ。付かず離れず、出来るだけ多くのゾンビを引き付け誘導し続けるように』


 俺は体を伸ばし、のろのろと大通りに向かって歩き出す。

 つまりは『餌』だ。生き餌としてゾンビから逃げ回る。それが交換条件。



『これからあなたを『牧羊犬シェパード』と呼称する。幸運を祈ります』

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ランナー・オブ・ザ・デッド 赤間 @akama

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