「コロンブスの卵 人形 実行犯」

「中身はどうなったのかな?」

「は?」

 私は彼の言葉に首をひねった。

「中身だよ。なかみ。どうなったのかな?」

 彼は車椅子を窓側に置いたその席で、静かに目を閉じている。

 私は彼に問うた。

「何のことだ?」

「コロンブスの卵だよ」

 きりきりきりきり。いや音がする。

 ゼンマイ仕掛けのようだ。

「だっておかしいだろ。割ってしまったら食べれないじゃ無いか」

「食べたいのなら最初から遊んでなかったと思うぞ」

「でも卵の意味がなくなるだろ?」

 ぱりんと割ってしまえばさ。

 彼の表情はみえない。

「彼は卵を食すように、人の意識を食したんだ」

 彼はそう言う。

「彼は暴いたのさ」

 彼はそう言う。


「君もそうなんだろう?」


 夜景が映る高層マンションの窓に、彼が車椅子を持つその姿が映っている。

 私は車椅子の人物を窓を介して見た。

 口から泡を吹いて、首に蛇のような血痕がついている。


 まるで人形の様だと、私は思った。


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