「老人 ファッション 寝坊」

 今日はどれにしよう。

 寝坊しちゃって時間がないけど、おしゃれには気を使わなきゃ。

 今日はどれを着よう。

 悩むなぁ、うーん。

 お肌のケアもしないといけないね。

 髪だって何もしてないからちゃんと櫛を入れないと、ぐしゃぐしゃになっちゃうね。

 今日はどれにしよう。

 どれでもいいかな。

 いや、やっぱり駄目だなぁ。

 どれにしよう。どれがいいかな。

 どれを着ていけば若い男の人に声をかけられるかな。

 私みたいなお婆さんなんて相手にしてもらえないかしら。

 でも、前は何回も声をかけてもらったし。

 今回だって大丈夫ね。

 どれにしよう。どれがいい?


 クローゼットを開けばそこには




 乾いたそれが




 やっぱりこれが一番かな?

 額から生えた角を隠すようにかぶれば、まるで最初からなかったように美しい。

 肌と髪と。

 新しいのを剥ぎにいかないと。

 すぐに駄目になるんだよね。


 赤い眼をした美しい女、いや、老婆は、被った女の生皮を撫でるように手を頬に擦り付け、ねっとりと微笑んだ。


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