繊細な座敷童さんと過ごす、穏やかな日々

僕が真っ先にお受けした印象は『かわいらしい』ということです。繊細に描写された座敷童さんの姿や風景、屋内の描き込みが素晴らしい! それは単に『細かい』というわけではなく、くどくならないよう、しかし想像力を掻き立ててくれるという、実に見事なさじ加減ですね。擬音語・擬態語の使い方が、全体を通して実にコミカルで読者の心を掴んで離しません。
連作短編の形をとっているので、この作品中で描かれている一ヶ月半という時間をゆったりのんびり味わうことができるのも大きな魅力です。

ただ、これは『一人ひとり感想も感性も違うだろう』という前置きをした上で申し上げますが、中盤が割とルーティンに陥っているのでは、という感じを受けました。
ヒロインがおちょくって、座敷童さんが逃げる。1ページ1ページは大変微笑ましいのですが(そしてそのお陰でラストの心理描写に納得がいくわけですが)、もう少し二人の関係性の変化、みたいなものが『明確に』あってもいいのかな、と思いました。せっかくヒロインは『男性嫌い』という設定なのですから、そんな一種の『足枷』が外れていく、ということはもう少し順を追って、大胆に描いてみてもよかったかもしれません。

一つの案に過ぎませんが、各話ごとにサブタイトルをつける、というのはいかがでしょう。
短絡的な考えで恐縮ですが、それだけで『あ、このページでは二人の関係はどうなるのかな』など、読者をより引きつけやすくなるでしょうし、あんみつさんご自身も『もう少しこのエピソードの特色を出してみようか?』などという考えが思い浮かばれるかもしれません。

『ここをしっかり直してみては?』というより『ここをもっともっと良くしてみては?』という感じですね。

今回は《誰かに校閲・しっかりとした感想をもらいたい人向けコンテスト》がきっかけで出会ったお話でしたので★★になっておりますが、内心は★★★です(笑)

上から目線&長文、失礼いたしました。

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