29 仕事始め・七草粥

【仕事始め】


 五月先生、外出から帰ってきました。

「うーさぶ。メイド、あっついお茶煎れて」

「5日が小寒でしたから、これからまだ寒くなりますよ」

「そうだな」

 メイドさん、お茶菓子に最中を出しました。


「ところで、編集さんどうでしたか?」

「んー、みんな忙しそうで……」

 五月先生、どうやら年始のご挨拶に行っていたようです。


「ということは、またお仕事いただけなかったのでございますね」

「いや、そんなことないぞ。いつでも原稿持ってきてって言ってた」

「それ、社交辞令じゃないですか?」

 おそらく、メイドさんが正解でしょう/


「何でもいいんだ!」

「へ?」

「編集さんが何と言おうと」

「はぁ……」

 五月先生、いつになく熱いです。


「いいもの書いて、突き付けてやる!」

「五月様頑張れぇ〜!」

 突きつけてやってください。


「五月様、おせんべも召し上がりますか?」

「うん、食べる。持ってきて」

 五月先生、もう熱冷めました。




【七草粥】


「五月様、昨年からお待ちかねの七草粥でございますよ」

「ほいほい、待ってました」

 そういえば秋頃そんな話してましたね。


「無病息災、今年もご健勝であられますように」

「お互いに。胃を休める意味もあるんだよな」

「ええ。お酒で弱った胃にやさしいのです」

 お正月、飲んで食べてしてましたものね。


「おっ、ちっさい餅も入ってる。うまうま」

「うふ、それはよかったです」

「おかわり」

「はいはい」

 春の七草、言えますか?


「おかわり」

 え、三杯目?


「はいって五月様、胃を休める気、まったくございませんね」

「せり、なずな、ごぎょう……」

「ごまかした」


 続きは、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、です。

 七草粥でも、食べ過ぎにはご注意を。

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