合宿先でのしょーがくせー一日目

 私の住む地区では子供会行事の一環として、一泊二日のリーダー研修会というのがある。これは低中学年を支える小学5,6年生リーダーを養うという目的で催されている合宿だ。

 職場の職員も数人引率で行くこととなっており、私の前任者は同行したようだった。

 小学生と密接な関係になれるまたとない機会だ! そう心にときめくものがありつつも、私は引率に消極的な姿勢を見せていた。

 10~12歳の小学生などストライクゾーンもいいところだ。故に、直に触れ合ったらどこまで理性が保てるか自信がないからである。

 そんなこんなで他の組織の方が引率者を担うということで、私は不参加という流れになったの……だが! 急遽一人が都合が付かなくなり、人員不足が発生したのだ。

「そういうことなら、参加します」

 と、表面上は“仕方なく”参加したという体裁を取る私。

 もちろん、内心喜んだのは言うまでもない。自分から積極的にではなく、欠員が出たが故の緊急措置! この形ならば、“まったく! 小学生は最高だぜ!!”の本心を悟られにくいからだ。

 そんなわけで、回りくどい方法だが、小学生と触れ合える千載一遇のチャンスを見事掴んだのである!!



 興奮冷めやらぬまま迎えた合宿当日。私に与えられた職務は、“写真撮影”。職場の広報等に用いるからだが、敢えて言おう! 最高の職務であると!!

 考えてもみたまえ。普段小学生を撮影するなど、不審者の極みと見られる。しかしだ、仕事として“合法的に至近距離で小学生を撮影し放題”なのだ!

 しかも! 撮影係となれば、小学生の方から積極的に絡んでくるに違いない!!

 お金では買えない価値がそこにある! と心躍りしつつ、バスは合宿先に向けて出発する。

「でさー。おそ松さん○○話での一松なんだけどさー」

(おそ松さんだと!?)

 前回書いたように、おそ松さん好きJSの存在は既に確認している。にも関わらずまたもや驚いてしまったのは、話題にしていたのが“男子”だからである。

 まさか少女だけではなく少年にも人気だったとは……と思うが、よくよく考えてみれば不思議なことではない。

 基本おそ松さんは下ネタ全開なシュールギャグだ。小学生男子というのは、基本的に下ネタ好きだ。となれば、おそ松さんにハマるのは必然なのだ。

 おそ松さん人気が想像以上に広がっていることを再認識しつつ、バスはパーキングエリアに辿り着く。

 そこで小学生たちはなけなしの小遣いで色々買おうとするのだが……ある少年がガチャを回していた。

 何やら心霊現象のガチャのようで、そんなもんに1,000円しかない軍資金を浪費するのはいかがなものと思いつつ、こういう辺りがいかにも小学生らしいと言えば小学生らしい。

 ゲットしたのは、ライトを照らすと霊の顔が浮かぶというもので、車中で何度も照らして遊んでいた。

 写真撮って写真撮ってとせがまれたので、「だったら夜に心霊写真撮ってみようか」と提案したところ、大喜びで受け入れられた。

 明らかに本来業務と異なる写真なのだが、そのくらいは大目に見てもらえるだろう。



 バスは合宿先に着き、最初はミーティングが行われるのだが、それまでに若干時間がある。ミーティングルームの隣は図書コーナーになっている。

 小学生たちはそこで読書に耽ってるのだが……ある少年たちが「18禁! 18禁!」とはしゃいでいた。

 一体どんないかがわしい本を読んでいるのかと思えば、何てことはない。幼学年向けの絵本に、裸が描かれていただけのことだ。

 18禁というのは厳密に言えば性器描写を伴う性交シーンを指すので、単なる裸程度では18禁には該当しないのだが。

 それはともかくとして、今時の小学生は18禁という言葉を知ってるのである。やはりネット等で情報を収集しているのだろうか?

 などと思いつつ、小学生たちと会話してみると、どうやらクラス内では「ハッピーツリーフレンズ」というウェブアニメが流行っているという話だった。

 どこかで聞いたことあるタイトルだと思いつつ、パッと思い浮かばない。後でググってみるとしよう。

「そーそー。今日の合宿には参加してないけど、友達がユーチューブで配信してるんだよー」

 はい? 今なんて言った? つべで配信ってことは、ユーチューバーか!?

 いや、確かに小学生の憧れの職業で、ユーチューバ―が上位に繰り出したのは記憶に新しい。しかしだ、単に憧れているだけではなく、現在進行形で配信してるだとっ!?

 俄かには信じ難いが、配信者の名前は聞いた。後で検索しなければ。


 

 昼食後は野外活動に入る小学生たち。早速仕事ということで写真を撮りまくる私。基本は単に撮影しているだけなのだが、時折小学生たちが積極的にピースサインしてくれるのは嬉しい。

 それなりに可愛いJSが多い中で、好みの子を物色する私。薄着でスカート姿の子には自然と目が向くし、三次元のメガネっ娘も意外と可愛い。常にマスクしているヲタ少女っぽい雰囲気の子も自然とツボる。

 そんな中一際目を引くのが、一番背の低いJSだ。五年生のようだが、身長は小学3,4年生ほどだ。年の割にはちっちゃいというのは、琴線に触れる。何とかこのJSと親密になれないだろうかと思いつつ、仕事に励むのであった。

 夕刻が迫ると野外活動も終わり、そのまま野外炊事へと移行する。虫刺され対策ということでJSたちが厚着なのが実に残念だが、小学生の手作り料理が食べられるのは至福の極みである。

「見て見てー。ギズモ!」

 あるJSが突然私の前でバッと上着を脱ぎ、Tシャツを曝け出す。

 ギズモっていうとアレか、水かけると増える奴か。随分前の映画のはずだが、今時のJSは知っているのか?

 しかしなんですか、今のは。晒したのはTシャツとはいえ、「村雨の、ちょっといい水着、見せたげる。じゃーん」的な王道サービスイベは!?

 少女は単にTシャツを自慢したいだけなのだろうが、あまりに美味し過ぎるハプニングに胸の高揚感は自然と高まる。これが無邪気の楽園って奴ですか!?

「ねーねー。なんでいっつもニヤニヤしてるのー?」

 ハッ! あるJSに声をかけられ正気に返る私。いかん! 嬉しさのあまり顔に出ていてしまっていた!? JSに不審がられるとマズイ、マズイぞー!?

「カメラメンさーん。カメラメンさーん」

 しかしそれは杞憂であった。何故だかそのJSはその後カメラメンさんと私に親しく絡んでくるようになった。男子に「なんでマンじゃなくメンなんだ」と突っ込まれたら、「だってカメラメンさんの方がカワイイんだもーん!」ということであった。

 いい年したオッサンを可愛く呼ぼうとするセンスもいかがなものと思うが、JSに慕われるのも悪いことではない。

 そんなイベントを交えつつ完成した手作り料理。メニューはカレーライスと焼きそば。カレーの方はルーの量が少な過ぎたためスープカレーと化してしまった。

 まあ、比叡カレーと比較すれば数万倍マシだろうし、小学生の手作りカレーが食べられるという事実が最重要なので、味は二の次だ。



 野外炊事も終わり、合宿棟へと戻る。そこで私はググってみる。

 まずはハッピーツリーフレンズ。検索して「ああ」と頷いた。以前「可愛い絵だけどグロイアニメ」と話題になった作品だ。話に聞いただけでタイトルまで覚えてなかっただけで、既知の作品だ。

 続いて例のユーチューバ―。聞いた名前を検索にかけてみると……

「これマジ!?」

 思わず声に出た。アップされている動画の一つに目を向けると、胸に飾られている名札は間違いなく、地元の小学校のものだ。

 顔を隠して正体を暴かれないよう配慮しているように見えて、名札でしっかりと身バレしている。頭隠して尻隠さずとは正にこのことか。

 ざっとアップされている動画の一覧を眺める。動画の数はそれなりだが、再生数は数十から百十数といったところ。完全に身内しか見てない再生数だ。

 大物ユーチューバ―に憧れ自分もいつかわと息巻いていたのだろうが、現実は非情である。所詮は小学生といったところか。はっちゃっけ過ぎてオフ会0人の大物ユーチューバ―のように素材と化さないよう、切に願う次第である。

 さて、撮影の約束をしていたので、少年たちの部屋へと赴いてみる。ライトで照らされた壁にカメラを向けるが、私の撮影技術が下手なこともあり、イマイチな結果に終わった。

 それはさておき、何でJSが男子の部屋に混じってるの? 合宿先で普通に男女で交流するどころか、「ハグ有りキス無し王様ゲーム」まで始める始末。

 百歩譲って男女が仲睦まじいところまではいい。しかし、王様ゲームなんて自分が小学生の時やった記憶ないぞ!? 今の小学生はそこまで進んでいるのか……。実に羨まけしからん!

「カメラマンさんも参加してよー!」

(なん……だとっ!?)

 思わず息を飲む。JSと一緒に王様ゲーム! しかもハグOKな……。エロゲなら間違いなくイエスを選ぶところだが……。

「……。消灯まではちゃんと寝るんだぞ」

 私は興味なさそうに踵を返し、部屋を後にした。ノリの悪い生真面目な大人だと小学生たちは白けたに違いない。

 違う。違うんだ! 大いに興味ある!! JSを合法的にハグできるなぞ最高過ぎる!!

 しかし、しかしだ! 一線は決して超えてはならない! YES! ロリータ、NO! タッチ。この鉄則は決して破ってはならないのだ。あくまで仕事として触れ合うだけ。それ以上は求めてはいけない。

 JSを抱き締められるかもしれない九連宝燈並みの幸運を自らドブに捨て、私は眠りへと就いたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

イマドキ! しょーがくせー 淫Qβ @Real_QB

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ