第8話チリソースが辛いのが基本というのは決めつけ

砂糖ザラメの自宅…学園隣。

「つまらん」

無表情に言うザラメに呆けた顔のシオ、こむぎ、エストリカ。

「なんやねんザラメいきなり」

「私もトモダチとの登下校と言うのをしてみたい!」

いつものクールな装いに反して漫画のように手足をばたつかせるザラメ。

「ゲーム以外で感情的になるの珍しいねザラメちゃん」

「でも、帰りは3人ですしね…あ」

「「「あ?」」」

こむぎが思いついたという風に声を出す。


「呼ばれて飛び出てきましたわ!召喚されしは天王寺・ジョロキア・小町!!!」

「出たな中二病ブート・キャンプ」

「名前ないやん」

素早いキレある本場のつっこみに動じないザラメ。

「メール送ったの3分前なんですけれど」

「ジョロちゃんのお友達って基本私たちだけだから」

小町を呼び出したのはこむぎだった。

なんでも同じレベルのお嬢様なら、話が合うだろうし、価値観が近いという意見だった。

「それでジョロちゃんの日常生活を参考にしたいんだけれど…」

エストリカの質問に、あまりにも普通過ぎた質問だったのか、小町はすこし目をパチクリとさせる。

「私ですか?自転車ですが」

「「「「自転車!?」」」」

驚く4人。

「車…いや天王寺家なら短距離テレポートアプリぐらい家にあるだろ!?」

「ま、まあ実家にはありますけれど…」

小町は困った顔をする。

テレポート。今も昔も誰しも夢見る魔法である。

電子魔道書が普及した現代、それは存在する。だが、アプリ自体が高く業務用だったり、人間一人転送させるのに大量のMANAが必要だったりと、便利な物にはそれ相応の対価が必要であり、個人所有となると一般家庭で例えるなら家にディ〇ニーランドをスタッフ付きで作ることに等しいことと、使用に大量のMANAを使うことから国に申請をしなければならなかったりする。

「私の家庭では、後々女系でも跡は継ぎますが、一般市民の生活をすることが義務付けられておりまして、平日は一人暮らしのマンション。土日祝日だけ実家ですわ」

「一人暮らし!?」

「エストリカのとこといっしょやな…」

「う、うちは私が居候みたいだから別だと思うけれど…」

さすがに小町と長い付き合いのザラメ、シオ、エストリカの3人でもこれには驚いた。

「でも、炊事洗濯もしてるんですよね?」

「ええ、一人暮らしをすれば生活に必要なことを自然と学べるという母親の教えで…」

そう不思議な顔でいう小町にザラメ以外の3人がすこし涙ぐむ。

「ザラメ、あんた生まれるとこまちごーたんよ」

「おい、女子力で既にジョロごときに負けていると?」

「じゃ、じゃあ趣味はなんなんですジョロキアさん?」

「衣服づくりですわ」

「は?」

驚くザラメ。

「なんだコスプレが趣味なのか?」

「いや、将来は財閥でデザイン部門を創るのが夢なんですの。設立者が出来なければどうしようもないかと」

「完敗だよザラメちゃん」

「お嬢様でも有名子役みたいな人生にならない教育なんですね」

「温室育ちにはもう無理やろ」

「おい、なんで一緒に登下校したいという夢から私への総ディスりに変わる」

白い目でザラメを見るエストリカ、こむぎ、シオの3人。

「なら私も一人暮らしをしよう!」

「無理だよ」

「無理ですね」

「ザラメやけどそんなに甘くあらへんよ」

「誰が上手いこと言えとシオ…しかしジョロなんでそんな教育されてる?世間のお嬢様のスペックと間違ってるぞ」

そう指摘された小町だったが、すこし間を置き瞳を閉じる。

「私のおじい様は一代で財を成しましたわ。小さな仕事も堅実に丁寧に、時間をかけて行うからこそ大きな仕事ができるようになる。古き教えを大切にする、『温故知新』、天王寺家の家訓ですわ」

それを聞き、一瞬遅れてパチパチと拍手される小町にそれにキョどる小町。

「ジョロちゃん、今度私の服も作ってよ!」

「私は料理を学びたいです!」

「ジョーたまにはゲーセンいこうや」

そうして4人はザラメを残し、小町を中心に下校していった。

「おんこちしん?そんな万能な電子魔道書があるのか?」

残されたザラメがその言葉の意味に気が付き、詳しく説明を再度小町に聞きに行ったのは、翌日のことだった。


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