日刊:女子高生のイマドキ電子魔道書の使い方

れっとあんばー

第1話濃い味になにを入れても無駄

私は白野こむぎ。

このたびこの私立砂糖学園に入学することが出来ました。

親が転勤族で、このたびここでお世話になるのですが、ここは独自カリキュラムの電子魔道書専門の授業があると聞いています。

ついていけるでしょうか…。

そして職員室で七味先生と言うメガネのかけた優しそうな先生に外で待っているように言われたのですが…。


来ない。


同じクラスになるというクラスメイトが迎えに来るというのですが、30分も経つのに来ません。

「…はっ!これはシンジンイジメというやつですか!?」

転校の連続でしたが、この体験は初めてです!

さあ、私はいじめられるのでしょう…か?

ドドドドドドドドドッッ!!!!という凄まじい足音が右側から聞こえてきて、振り返ります。

「ひっ!?」

女子高生では今では絶滅危惧種となった長袖膝下ロングスカートの昭和ドラマに出てきそうな大きくて白い…多分女性?が両腕に女の子を抱えて走ってきます。

そして私の目の前に着く大きい女の子。

右腕に乗っかっていたというより、しがみついていたやけに煌びやかな髪飾りを付けた女の子が、青ざめるように文句を言います。

「エリカ!なんで私の言った方向に行かない!」

「え?だってザラメちゃん方向音痴だし」

で、でかい…高校女子平均身長の私が見上げる背の大きさ…180センチぐらい?って両腕に女の子乗せて…あ、電子魔道書で力持ちになってるのかな?

そうこの世の中には、電子魔道書があります。

MANAというナノマシンを使用し、デバイス…スマホだったり、タブレットだったりするものを使いアプリとして起動します。

それはさながら魔法のようで、教科書にも一番最初に使われたのは隕石の破壊に使われたとか。

そんな電子魔道書…長いのでアプリって言いますね。そんなアプリには色々な効果があるんです!

力持ちになれたり、速く走れたりするような身体に関するものだけでなく、昔の映画では揺れたり風が来たりする映画を4Dと言っていたそうですが、現代ではアプリで自分自身がその場にいるエキストラのようなバーチャルなことも可能なんです。

「てか、シオ!お前よくエリカのMAXスピードで落ちなかったな!」

「なにぃ?私はソレ見越して『自動車の空気抵抗論』を起動してたんだ。風よけに無料の教科書アプリだし。それにMAXスピードって言ったのザラメじゃん。ジゴージトク~」

「なにを~!!!!!」

「そんな青ざめて叫んだら昼のナポリタンが…」

左手に乗っていた茶髪の女の子がそう言うと髪飾りの女の子が口を抑えて後ろを向きます。

そして茶髪の女の子が私に向かってくると、事務的な様子で言います。

「ほい、迎えに来たよ」

「あ、貴方たちがクラスメイトですか?」

「なんや七味のやつ名前も言わなかったんか…麹シオ、あっちのリバースナポリタンしてるのが砂糖ザラメ、んでこのデカイのが…」

バサッとロシア人の女の子のセーラー服の裾をまくりあげます。

そして見えたのはテレビでしか見たことのないような、ボディービルダーのような腹筋。

そうされた大きな女の子はまるでスカートをまくられたかのように顔を真っ赤にして叫ぶとしゃがみ込みます。

「エストリカ・エレンコフ。さてどうかなぁーっととと?」

私は見とれてしまいました。

「あの、エストリカさんよかったらもう一度見事な腹筋を…」

「ふぇ!?」

「初見でこの反応は初だな」

「お願いします!出来れば触らせてくださいっ!!!」

「な、なんで?気持ち悪くないの?」

「筋肉フェチなんです」

「よくあるパターンだな」

「男のじゃダメなんです!だって気持ち悪いじゃないですか!自己陶酔しきって自慢してきても大したことなかったり、鍛え方がダメだったり、男性はすこし丸いほうが好みです!」

キッと眼を鋭くさせる私に茶髪のシオと呼ばれた女の子が、ビニール袋とお友達になってる髪飾りの女の子に叫びます。

「このねーちゃん合格やでザラメ」

「ぐべ?」

涙鼻水など出るもの全部出しているような髪飾りの女の子に、目をキラキラさせた私、最初とはすこし印象の変わったシオさん、未だにしゃがみ込んだエストリカさんがいました。

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