Gun & Gun!

 えらい長い事、利伽りか浅間あさま宗一むねかずの所謂「様子見合戦」は続いた。


 相変わらず宗一はその顔に笑みを浮かべて、余裕と歓喜を表現してる。

 一目見ただけやとそうとは分からんけど、その気配から「闇落ち」して化身になりかけてる……いや、殆ど化身やっちゅー事は分かった。

 様子見言うても、休む間もなくこんだけ攻防を続けとったらとっくに霊力も尽きておかし無いんやけど、二人にそんな兆候は見られへん。

 利伽は地脈から力を吸い上げてるから分からんでもないけど、化身の宗一まで接続コネクト出来るなんて反則ちゃうんかっちゅー話や。

 

『まぁな―――……浅間宗一は―――接続師にありながら闇落ちした―――珍しい存在になったっちゅーんは間違いないわな―――』

 

 ばあちゃんが俺らにはあんまし興味ない感想を呟いたとき、戦闘に大きな動きが起こった!

 防御をよもぎに任せてる利伽が、手に持つ巨大霊銃に力を込め出した!

 込められてる霊力……そこから考えられる威力は、最初の一発目なんか遥かに上回るもんやって簡単に想像出来たんや!

 

「利伽様と蓬の連携が、ここで有利に働きましたニャー」

 

 俺の事を散々実況や解説やて言うてたビャクかて、思わず解説してもーてるやんけ。

 

「ウチは、実況も解説も好きニャから良いのニャー」

 

 俺の視線から何を考えてるんか覚ったビャクが、俺が何かを言う前にそう口にした。

 その表情に照れや焦りとかの変化はなく、多分本当にそう考えてるんやろなー。

 

 ―――ドガガッ!

 

 そんな事を考えとったら、利伽が溜め込んだ霊力を一気に解放して狙撃……ちゃう、これは砲撃やな! 攻撃を慣行した!

 当たればただや済まんっちゅー攻撃に、流石の宗一もその場から飛び退き回避する! 

 タイミングがバレバレやった利伽の攻撃は、宗一に余裕を以て躱わされたんや。

 そらそーやな。

 

 ―――ズガガガガッ!

 

「な……なんやっ!? アレッ!?」

 

「タッちゃん、ナイス解説っ!」

 

 利伽の攻撃は、渾身の一撃を放って終わり……やなかった!

 大きく飛び退いた宗一を追って利伽は単身、追撃を掛けてたんや!

 まぁ……それに驚いて出した言葉に、ビャクがムカつく相槌を入れたんはこの際置いとく。

 宗一を追って飛翔する利伽の手には、さっきまであった長尺霊銃の姿はない!

 ごつかった霊銃の半分もない……片手で持てる程度の、箱形の銃……それが両手に!

 つまり二丁持ってるって事になる!

 利伽はそこから、霊弾の雨を宗一に向けて放ってたんや!

 

「何や、あの攻撃はっ!? それにあんなん、どっから出したんや? まさか、利伽は一瞬で出したり引っ込めたり出来るんか!?」

 

 それは不可能って訳や無い。

 時間と霊力を掛ければ、自分の許容が許す限り何回でも出し入れ出来るんや。

 けど当然、そんな事は簡単に……しかも無制限には出来ん。

 

『利伽ちゃんはな―――あんたみたいに考えなしで出し入れしたりせんよ―――。あれはな―――霊銃を分解してるんやで―――』

 

『ぶ……分解!?』

 

 俺にはすぐに、ばあちゃんの言うてる事が理解できんかった。

 隣のビャクをみても俺と似たようなもんなんか、疑問符を浮かべて小首を傾げてる。

 

『そや―――分解やで―――。ほんま―――利伽ちゃんほよー考えてるで―――』

 

 心底感心してるって声音は、冗談やなさそうや。

 

『一回完全に引っ込めた霊器を―――もう一回出すとなったら―――地脈の霊力が追い付かんと―――自分自身の霊力を大量に使うわな―――。それやと―――長時間の戦闘がしんどくなる―――……それは龍彦も分かってるわな―――?』

 

 そんなもん、答えるまでもない。

 以前戦ったとき、俺は誤って2回も霊器を具現化する羽目になったんや。

 そん時の疲労っちゅーたら、並大抵や無かったわ。

 

『せやから利伽ちゃんは――――――いちいち具現化し直すんやなくて―――その武器をっちゅー技法を使ったんや―――』

 

 武器を……バラす?

 利伽の持ってる武器からは、攻撃は軽いんやろうけど霊気の弾丸を速連射して、宗一に反撃のいとまさえ与えてない!

 そらー見ようによっては、利伽の持ってるんはサブマシンガンに見えんでもない。

 いや、攻撃スタイルを見れば、あれはそれを模したもんなんやろー。

 でもその大きさは、1個が最初に持ってたバカデカイ霊銃の半分もない。

 つまり、あの霊銃をバラしたからゆーて、あの大きさにはならんっちゅーこっちゃ。

 

『でも、みそぎ様? 大きさが全然違いますニャ?』

 

 ビャクもおんなじ事思たんやろ、ばあちゃんにそう質問した。

 

『あんたらな―――……脳筋にも程があるで―――。霊器なんやから―――細かく複雑な形状のもん作らんでも―――大体の用途さえ“想像”して具現化しとけば―――余分なとこは消せるし―――足りひんとこは付け足せるやろ―――……』

 

 まるで溜め息でもつきそうな……やなくて、ほんまに溜め息をつきながらばあちゃんはそう説明した。

 俺とビャクは「脳筋ズ」やってコンビ認定されたもん同士、殆ど同時に互いの顔を見合わせて、おんなじ様な笑顔を向けあった。

 

『利伽ちゃんはな―――なんもかんも初めてやっちゅーのに―――ちゃーんと特性を把握しとるんやで―――。この分やと―――霊気の特性変化も―――すぐ出来るようになるんちゃうかな―――?』

 

 ―――ズガガガガッ!

 

 利伽は相変わらず、宗一の顔面に向けてマシンガンのように連射を浴びせてる!

 その攻撃は効いてないにしても、宗一は両腕を顔の前で交差させて防御に撤してて、反撃する事は出来へん。

 

 ―――ガキンッ! ジャキッ! ドンッ!

 

 直後、利伽は突然攻撃を止めたかー思たら2丁のマシンガンを直列に、縦に繋いで一本にし、そこから如何にも一撃が強力な攻撃を宗一の腹に向けて繰り出したんや!

 攻撃の意識が完全に顔へ向いてた宗一は勿論、見てた俺も不意を突かれた一撃やった!

 

 ―――ドガガガッ!

 

 どてっ腹に攻撃を食らった宗一は、そのまま吹っ飛ばされて地面に激突した!

 利伽の所謂「クリティカル・ヒット」ってやつや!

 

「でも……何なんや? あの攻撃は?」

 

 手に持つマシンガンを、縦に繋げて攻撃する。

 単純にそれだけで攻撃力が上がるんか?

 

『龍彦―――あんたは―――……利伽ちゃんの持っとる霊器をよー見てみ―――』

 

 ばあちゃんに促されて、俺は利伽が腰の辺りで構えてる霊器を見た。

 

「……あれ?」

 

「タッちゃん、利伽さんの霊器……さっきと形が違いますニャー」

 

 俺が気づくと同時に、隣のビャクもそう声を掛けてきた。

 利伽の持ってる霊器は、単純にマシンガンを2つ繋げた形やなく、いつの間にか1挺の銃へと様変わりしとったんや!

 そのシルエットに利伽の持ち方は……どっかで見覚えが……。

 

『あの形状は―――……利伽ちゃん―――霊器を散弾銃形態に変えてたんやね―――』

 

 散弾銃……そや、あれはショットガンや!

 銃の形や見た目、利伽の持ち方構え方もそうやけど、何よりも攻撃音と攻撃力が如実に物語ってるわ!

 

『散弾は―――離れれば広範囲に―――近付けば―――強力な攻撃が可能やで―――。何より―――弱くて小さい霊弾を無数に撃ち出すんや―――。一撃が強力な砲撃よりも―――造り出すんも溜めるんも簡単やわな―――』

 

 つまり利伽は……遠距離攻撃は勿論やけど、近接戦闘でもそれなりに戦えるっちゅー事か……。

 しかも霊器を、分離させたりくっ付けたり……。

 その機転、発想力は俺には真似出来へん……流石や。

 

「ははは……流石は利伽やなー……。俺には真似出来へん、俺の想像力を越えた使い方やで……。そらこれだけの才能があったら、浅間家も利伽を欲しがるわなー……」

 

 嫉妬やない。

 妬みでもない。

 俺の口から出たんは、心底そう感じた……俺の素直な意見や。

 ……まぁ、ちょーっとだけ悔しいけどな。

 

『それは少し違うな』

 

「おうっ!?」

 

 いきなり頭の中に響いた重々しい声に、俺は思わず声をあげてビビってもーた!

 ビャクも隣で、ビクッと体を震わせて、尻尾の毛を逆立ててる!

 よっぽどビビったんやろなー……。

 

『……なんや―――……重敏かいな―――……』

 

 ばあちゃんの言葉で、その声の主が浅間家当主、浅間重敏やっちゅー事に気付いたんや。

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