8.質問と回答

 僕は今目の前の風景と、自分の耳を疑うあまり、僕は急に周りの景色がぼんやりしてきた。

 息が苦しい……。

 「大丈夫ですか? 具合悪いです?」

 二人のどちらかが、僕に声をかけたようだが、どちらの声だか判別が出来ない。それくらいにどうにかなりそう……いや、どうにかなっているようだ。

 「……死んだのか? ……ユリは……?」

 僕はやっとの思いで、声を振り絞った。

 「はい……、亡くなりました。」

 さっきから彼女の言う事が理解出来ない。とにかく落ち着かなくては……。

 「……本当なのか? なぜ?」

 「…………。」

 忌々しい元子役タレントは、答えず僕の様子を見ているようだ。川村絵里は僕の顔と潮崎さくらの交互に見ている。今目の前の会話が、どういう意味を持っているのか理解が出来ずに、うろたえているようだ。

 「質問の事は覚えていますか?」

 元子役タレントの声音は、さっきより真剣さを増し、低い声になってきた。

 「質問? 何のことだ?」

 「高柳ユリさんを殺してしまいましたよね?」

 潮崎さくらの声音は低い。

 「いや……殺してはいないが……。」

 僕は息を思い切り吸って、続け様に

 「さあ、正直に言ったよ? タネを……なぜ彼女のことを知っている? しかもなぜ死んだことを知っている? そして、どうして僕が殺したと質問した?」

とまくし立てた。

 「なぜユリさんの事を知っている……は答えられないですね。正直には答えてくれていないので……」

 潮崎さくらに笑みはすっかり消え、真剣そのものである。声が低くゆっくりとした口調で、さっきまでとは別人のようだ。

 「で……ユリさんが殺されたことを知ったのは……。今朝多摩川で遺体が見つかったと、知っているからです。これでネットのニュースで……。」

と潮崎さくらは携帯電話を取り出した。

 「それで……、何だっけ? ああ、どうして荒橋さんが殺したと質問したか、でしたっけ?」

 「そうだ。失礼にも程があるだろ?」

 「さっき、高柳ユリさんと別れたのはいつって言っていましたっけ?」

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