痙攣

それは突然の出来事だった。


弟が学校で倒れた。


自宅の電話が鳴り、弟の担任が母にそう言った。


母は焦り、僕は頭が真っ白になった。


担任が言うからには、急に体が痙攣し、そのまま意識を失ったらしいのだ。


そして今、救急車を呼んで病院に搬送するところだという。


結果的に大事には至らなかったのだが、どうやら自閉症の子に見られる「てんかん」の症状らしかった。


思春期の自閉症の子に見られるこの症状の原因はよく分かっていないらしいのだが、今後もこのような痙攣症状が起こる可能性は大きいらしいと医者は言った。


そして、それからも弟は数回、痙攣を起こすことがあり、その度に病院に運ばれた。


僕は現場に居合わせたことはまだないが、自宅で痙攣が起こったのを見た母は恐怖で震え上がったらしい。


母は弟が倒れた時に父に電話したらしいのだが、父の電話には繋がらず、母はそのことで父に対してかなり怒りを露わにしていた。


僕は不安になった。


こんな発作がこれからも続くとなれば、年老いた母や父には対処が難しくなるかもしれない。僕が側にいないとダメかもしれない。


ただでさえ不安が多いのに、また大きな心配事が一つ増えた。


僕は弟の痙攣している姿を見て、一体何を感じるのだろうか。







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