理想の普通

もしも願いがひとつ叶うなら、何を願うか。


昔の僕は、弟を普通の子にして欲しいと神様に願っていた。


普通に会話して、普通にケンカして、友達にだって普通に紹介できる。


そんな『普通』に僕は憧れていた。


だけど最近、何が普通で、何が普通じゃないのか分からなくなってきた。


よく考えたら、僕にとっては弟に障がいがあるのが普通で、でも周りから見たらそれは普通じゃない。


豚肉を食べない人はそれが普通で、食べる人から見たらそれは普通じゃない。


僕にとっての『普通』というのは、今自分が置かれている環境そのもののことで、僕が憧れていたのは『普通』じゃなくて、あくまで僕が思う『理想の普通』だったのだろう。


僕が思う『理想の普通』。


それがどういうものなのか、僕は体験したことはないから分からないけど、最近は昔ほど、弟が普通の子になって欲しいとは思わなくなった。


僕が大人になったのか、それとも単に今の環境に慣れたのか。


理由はよく分からない。


ただ、やっぱり将来が不安なことには変わりない。


両親は一体どう思っているのだろうか。


弟に普通の子になって欲しいと思っているのだろうか。


でもそれを願うということは、今の弟を否定するということになる。


怖くて僕には聞けないけど、両親の今までの苦労を考えると、たとえそう願っていても仕方がないと僕は思う。


『家族の本心』


それは僕の家族にとって、開けてはいけないパンドラの箱なのかもしれない。















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