第32話 守人

 あれから数日間は平和だった。

 実際、SMPCがどの程度の組織なのか実態は掴めぬまま…。


 彼らも積極的に僕らに絡むことはないだろう…。

 六三郎が迦楼人かるとに絡んだのは、性的嗜好によるものだったそうだ。

 警察に事情聴取に呼ばれた迦楼人かるとに、その説明があったという。


 迦楼人かるとに性的悪戯をしていた看護婦には嫉妬から嫌がらせをしていたようだ。

 そう嫉妬…六三郎の狙いは迦楼人かるとのブリーフを手に入れることだった。


「僕はボクサー派だ…」

 迦楼人かるとに話しかけたときに、そんなことを言われて逆上したらしい。

 正確にはフルバックのパンティ派なのだが…。


 六三郎は少年愛というより、少年の履いたブリーフ愛だったのだろう…確かにピンポイントな嗜好だ。


 嗜好は多種多様…それを生業なりわいとしている乱子と蝶代。

 体現(体感)しているシズシズ。


 そのシズシズの見解というか私見では、覚醒の仕方の問題ではないかと言う。

 僕で例えれば、性的な興奮が臨界を超えるほどの高まり、倫理観から感じる背徳の罪悪感、矛盾する感覚を外側へ解放するために覚醒する能力。

 SMPCは内側へ…内側へと向けられる劣等感、心の奥底へ吸い込んでいくブラックホールの先に到達することがトリガーとなるのではないか…。

 クドクドと説明くさい小難しいことを饒舌じょうぜつに語っていたが、半分以上は聞き流していた…某英会話教材のように…。


 休憩中の乱子の人間椅子としてのお務めを忠実に熟すシズシズ。

 乱子の尻の下で四つん這いのまま、真顔で見解を述べる奴隷。

 なかなかシュールな絵面えづらであった。


 そう…ある日アナタにも覚醒が訪れるかもしれないのだ。

 常にトリガーに指が掛かっている状態だと認識すべきだ。


「ひったくりよー誰か捕まえて!」

 街を歩く僕の耳に、誰かのHELPが届くとき。


 僕は公衆電話など探さない…。


 僕が探すのは…好みの女生とフェードインしやすいスカート。

「フェードイン!」

 僕はロングコートとスカートを同時にまくり上げ、身体をスルッと彼女の足の間に滑り込ませる。

 細い足首…しなやかなふくらはぎを経て…柔らかなふとももの、その先の三角形を視認する。

(まだ肌寒いのに…生足で…いいよ…パンティの色が白い肌をバックに輝いている…。

 蛍光ブルーとパールホワイトのストライプ…クロッチ部分からサイドギャザーでシートが張り付いている…。

 その内側には…秘密の…想像するだけでドキドキするよ…しないわけないだろ…こんな鼻先が振れそうな距離で…アナタの香りが僕を包んでいるんだよ…僕の身体の隅々に巡れ!アナタの秘密の香りよ…薄暗いスカートの中で淫靡に艶めくストライプ…ごめんよ…もう逝かなくちゃ…コンプリート!)


「レボリューション!」


 スカートの中から飛び出し、ひったり犯の前に立ちふさがる、お面の学生服。

「超能力戦士アングルメーター見参」


 女性の悲鳴を背中で聞いて…正義を執行する超能力戦士。

 法治国家に悩み…国家権力に怯え…女性に蔑まれる。


「それでも守りたいモノが僕にはある!」


 戦えアングルメーター!

 捕まるな  桜木さくらぎ 雪夜ゆきや!


 ………Angle Meter完

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Angle Meter 桜雪 @sakurayuki

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