第22話 病室中へフェードイン

「行くぞ!」

 僕が先頭を…正面玄関の自動ドアを潜る…。

 僕は後ろを振り返らない…もう後には退けない。


 病院に入って10分…。


 シズシズと乱子が警備員に取り押さえられ、パトカーで連行された…。

「ふきやふん…へふめぇひへふへ!」

「気安くお触れでないよ! 説明しておやり雪夜…雪夜!」


 しかたない…病院にムチを振り回すボンテージとギャグボール装備の半裸の奴隷が正面玄関から堂々と入ってきたのだ…警備員は優秀だった。


 後ろを振り向かなかったのは、アレだ…まぁ…俺に構わず先に行けって…聴こえた。

 確かに聴こえた気がする。

 まぁ…英断だったと思う。


 問題は、作戦が10分で無に帰したことだ…。

 どうしたものか…。


 とりあえず…紙パックのジュースを飲みながら考える。

 なぜだろう…なぜ、病院とかに入ると紙パックのジュースが飲みたくなる。

 パブロフの犬ってやつだろうか。


 さて…病室の前だ。

 どうしたものか…僕の能力は瞬間移動。

 念動力に対して、あまりに不利な状況。

 というか相手にならない。


 僕のポケットには乱子が持たせてくれた紫のパンティ。

 先ほどまで乱子が履いていたものだ。

「私に何かあったらコレを…」

 と僕の手に握らせた紫のパンティ。

(どうしろというのだ…)

 僕は、ギュッと紫のパンティを握りしめた。


 予定では、看護婦が隔離病室に入っている時に、乱子のスカートから僕が瞬間移動する。

 その後、シズシズが乱子の胸で念動力を発動し、看護婦の動きを止めつつ、入室してくるという手筈だった…。

 一応確認してみたが…鍵が掛かっている。

 意識不明の植物状態だもの…。


 植物状態とはいえ、念動力と遠隔会話を使う相手…。

 どうすればいいんだろう。

 放置すれば、いずれ他人の命を奪いかねない使い方。


 条件が揃わなければ瞬間移動できない。

 植物状態の患者…3時間交代で看護婦が出入りするようだ。

 問題は…都合よく近辺を通りかかる看護婦とタイミングが合えばあるいは…。


「あっ…例の看護婦が入った」

 僕は周囲を見回し…「フェードイン!」

(なんだか…久しぶりだ…)


 あぁ…アルコールの香りに微かな香水が混じる…うん…夜勤だったかい…あなたの香りが混ざっているよ…お仕事ご苦労さま…仕事用かな…そのショーツ、透けても目立たないように白一色…でも本当の自分は?わかるよ…きわどい角度のフロントでね…素敵だ…アバンギャルドなアナタを、そんな小さな布では隠し切れないよ…さぁ解放して…解き放って…。


(あぁ…近づいてく…引き寄せられる…アナタの香りの源へ…僕よ原始へ還れ…コンプリート)


「レボリューション」


「またお前か!エロ仮面!なんだ…お前、住んでるのか?アタシの股間に住んでるのか?」

「ハハハ、馬鹿を言っちゃいけない、私はキサマの股間に住んでるわけないだろう」

 とりあえずお面の位置を直す。


 看護婦の手にはサインペン。

 患者の顔にはイタズラ書き…。

 閉じた瞳に目玉を描いていやがる…額に『肉』って…お前いくつだ?


「動機は解った!」

 看護婦を指さし決めポーズ。


『わかったなら早く何とかしろ!エロ仮面!』

 頭に響く彼の声…患者の少年…以外にも美少年全開だった。

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