第19話 天空の白 ラピュータ

 いつぞやのコンビニの前を通る。

 修復こそ終わっているが、空き店舗のまま。

 新品のガラスにシールが張られている、その向こうは暗い空間が冷たく広がる。


 なんとなく夏の終わりは寂しさを感じます、桜木さくらぎ 雪夜ゆきやです。

 コンビニ後に背を向けた数秒後…背中で破壊音!

 ガラスと瓦礫がアーケードの屋根で跳ね返る。


(ガス、バスバフハス?バス、ガス爆発)

 違うわ!

 ラブホ謎爆発だ。


 とりあえずHOTEL『ラピュータ』にGO…テンション上がるぜ!

 ラブホ…ラブホ…謎爆発…謎爆発…いや正義の味方の…そのなんだ…血が騒ぐ?的なアレだぞ…その…ひょっとしたら部屋とか見えるかもとか、フロントってどんな感じなんだ?とかじゃないぞ…もしかしたら…裸の女性がとか期待してないぞ!

 ……登校してる場合じゃねえ!今日は(も)遅刻だ!


 ラピュータ前には人だかり…

「はいはいごめんなさいよ…」

 手を前に屈みがちに隙間をすり抜け最前列へ。


 3階が…ガボーンとジェンガみたいに、すっぽ抜かれている。

(なんだアレ)

 首を傾げていると、今度は1階がガボッと引っこ抜かれた……。

(へっ?)

 ただごとじゃねぇ……な……。

 僕は、鞄からお面を取りだし

「変身」

 いざというときは…あのOLさんだ、Lock On!


 あたりを見回すと…不審者発見。

 ラピュータ正面の路地から、風俗嬢だと思われる若く派手な女性の胸を揉みながら…逝っちゃってる(目が)スーツ姿の男…なんだろう…スーツを着ていても無職感漂う風貌。

(シズシズだ…あの無精ひげ…くたびれたスーツ…クビになったのかな…やっぱり)


 とりあえず…

「おい!貴様、破壊活動を止めろ!」

「うるさいんだよ!この街を滅茶苦茶にしてやる」

「ちょっと…おじさん…アタシこんなトコで揉まれるのやだな~」

「90分25000円は払ったぞ!」

「そうだけど~警察に捕まりそうで怖い~」

「警察?怖かねぇよ…むしろ壊したいのは警察署だ!そうだ…警察に行こう」

「京都に行くみたいに言うな!…心配せずとも、僕が警察に送ってやる!」

「まだいたのか…早よガッコ行け…お面学生」

「オープン ザ リビドー!」

 僕を無視して、嬢の胸を弄るシズシズ…もうその顔に正義は無い。

「やめろ!シズシズ!お前はそんな男じゃなかったはずだ!」

「シズシズ?俺?シズシズなの?」

「シズシズ…カッ…ハッ…ウケる」

 嬢も揉まれながら手を叩いて楽しそうだ。


「お前に何が解る?人助けしても…痴漢だと騒がれて…捕まって…こんな能力無ければ…俺は、普通にサラリーマンとして、あのホテルで…女の子とイチャイチャタイムを愉しんでいたはずなんだ!…それなのに…俺は…痴漢で解雇だよ…社会通念性に著しく逸脱した行為で解雇だバカ野郎!」

「どうでもいいが…胸を揉みながらキレるな!彼女を離せシズシズ」

「バカやろう!後、20分はあるわボケ!」

「70分、揉んでるのか…」

「おっぱい…痛い~」

「シズシズ…」

 僕が1歩近づくと、ドンッ!衝撃波で後ろに吹っ飛ばされた。

「ぐっ…」

 仰向けに倒れる僕の目の前には白いパンティ…無垢なる白。

「ちっ…こうなるのか…フェードイン!」

 フルバックのパンティ、飾り気のないデザインだがソレがいい。

 清楚なだけじゃないのよ…ぼうや…そんな大人な刺繍が施されている。

 ヒップには大きな蝶が銀の糸で羽ばたいている…いやその花にとまっているのか…あぁ僕も、その花にとめて欲しい…蜜が溢れるあなたの花に…清楚の奥を…僕に垣間見せてください…あぁ…ダメだ……。

「コンプリート…シズシズ…目を覚ませ!」


 嬢のミニスカートから飛び出す僕。

「レボリューション!&ただの肘鉄!」

 ガスッ!

 シズシズの顔面にめり込む僕の肘。

 イメージトレーニング通りの効果だ、悶絶するシズシズ。

「正義の心を取り戻してくれ…シズシズ…たとえ日陰の存在でもだ…」

 しゃがんで手を差し出す僕……フッと笑って手を取るシズシズ。

「僕と…この街を守ろう…シズシズ」

「キミの名は?」

「僕はアングルメーター…あなたと同じ能力者だ」

 嬢のスカートの下で僕らは硬い握手を交わした。

 嬢のパンティはグレーに黒の水玉Tバック、白いフリルが腰を飾る、ちょっと微妙なデザイン。


 PiPiPiPiPi……

「あっ…タイマー…あと10分だけど?延長?」

 嬢が股下のシズシズに聞く。

「いや…結構だ」

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