第18話 ホワイトアウト

 病院です。

 入院したクラスメイツにプリントとプリンを届けに来てます。

 桜木さくらぎ 雪夜ゆきや 日直です。

 帰宅部ヒマだろ?の一言で、僕が来たわけです。


 ナースとか白衣とか、女医とか病弱な美少女とか…考えてません。

 もちろん興味がないわけではないですよ。


 病室にたどり着くまで1時間かかってしまった……。

 僕は悪くない…迷ったわけでもない…白衣の天使に惑わされただけだ。


「容体はどうだい?」

「桜木くん」

「プリンとプリントを持ってきたよ」

「へぇ~桜木くんが?ありがと」

 入院しているのはクラスの女子だ。

 陸上部の所属で、高跳びの選手、練習中に腰を痛めたらしい。

 少し不自由そうに上体を起こそうとする。

「大丈夫か、無理しなくてもいいんだぞ」

 僕は、手を貸そうと彼女に近づいて手を差し伸べる。

 彼女の手を取って軽く引き寄せる。

 力が入りすぎたのか、彼女とタイミングが合ったのか、彼女が前屈みになった。

 悪気はなかったんだが…彼女の胸が…ノーブラの先端が…スレンダーな肢体、ふくらみのない胸に薄いピンクの先端が丸見えになる。


 僕はすぐに視線を逸らした、逸らした先に……シーツが強風に煽られ、屋上で取りこもうと必死にシーツをまとめている看護婦さん。

 大変だな~。

「あっ!」

 手すりに引っかかったシーツに手を掛けた看護婦さんを強風が襲う。

 何枚ものシーツが空に舞い上がる、そこに巻き込まれる看護婦さん。

(いかん!)

 僕は病室から走り出た。

「変身!すかさずフェードイン!」

 目の前の看護婦さんのスカートに潜り込む。

 ガシャン!

 看護婦さんが医療器具を床に落とす。

「騒ぐな!プロだろ!」

 なんのプロだか自分でも解らないが看護婦さんは「はい…」と小声で答えた。

「それでいい…すぐ済む」

(急げ…俺のリビドーよ…高まれ!消毒薬の匂い…なんだろう…スカートの中だと新鮮だ…薄い水色のショーツ…白いストッキングの向こうに春の海のような水色…水色って何色?…透明じゃないの…あぁ…アナタのショーツが透明だったら…僕は…僕の目には…アナタの茂みが…女神が閉じ込めれた洞窟…それをどかすのは誰?…水色の封印から天照様が…ほら…顔をだすよ…あぁ…洞窟に戻りたい…アナタの中へ…逝ってみたいと思いませんか?……はぁうぅぅううぅ……鼻先に触れそうだよ…)

 A.Eフィールドが…高まる……。

「コンプリート!」


「レボリューション!うおっ…」

 慌ててしがみ付いた看護婦さんの足。

「なに?どこから…いつから…」

「助けに来ました…たぶん…」

 僕の身体は完全に宙に浮いていた。

 A.Eフィールドが急速に下がる。

(やばい…時間を止めて助けるつもりが…計算外……)

 止まった時間では、シーツも宙で止まる、それを伝って看護婦さんを助けるつもりだったが…ヤバイ浮遊感だ。

 シーツが手すりに絡まり、看護婦さんがシーツに絡まり、僕が看護婦さんの足にしがみ付く。

(足手まとい……)


 僕のせいで…バランスが崩れた…シーツがほどけて落下する。

 見上げた先は、看護婦さんの白いパンティ…透けないようにシンプルなデザイン…嫌いじゃ無い…嫌いじゃ無いけど…それどころじゃない…)


 ボフッ!

 看護婦さんを抱きしめた瞬間、僕たちは地面に叩きつけられた……はずだった。

(ボフッ?…)

 地面には大量の布団が敷き詰められていた。

(助かった……でもなぜ?)

 白いシーツと布団に抱かれ、看護婦さんの純白のショーツに顔を埋める僕。

(あぁ白い世界…神が与えたホワイトアウト…かぐわしい香りだ…)


〈大丈夫かい?〉

「えっ?誰?」

「いや…アンタが誰?いつまでしがみ付いてるの?」

 看護婦さんが勤務中でなければ、グーでいきますけどって目で僕を見ている。

〈ごめんね…看護婦さんを脅かすつもりだったんだけどね…巻き込んだみたいだね〉

 幼い少年の声だ…頭に直接聞こえてくる。

〈その看護婦さんはね、僕に意地悪するんだ…それで脅かそうと思ってさ〉

「どこにいる?」

「お前がどこに顔突っ込んでんだ!」

 看護婦さんがキレだした。

〈キミも変な能力を持ってるみたいだね…今度遊んでよ…またね〉

「なんなんだ…」

「なんでもいいよ!顔どけろや!エロ仮面!」


 白く、かぐわしい香りに包まれ、僕に話しかけてきた少年……まさか……能力者か。


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