第3話 目覚めしもの

 僕、桜木さくらぎ 雪夜ゆきやは、好みの女性のスカートの中で性的興奮を高めると目標のスカートの中へ瞬間移動できる超能力者さ。


 唐突に回想するよ。

 置いてかれるなよ!ついて来い。


 僕が初めて瞬間移動ジャンプしたのは、小学校5年生のときだった。

 音楽の先生に憧れたころ。

 大人の魅力に惹かれる…そんな時ってあるだろ?

 僕は先生と、話がしたくって興味もないクラシック音楽を聴こうと思ったのさ。

 家に帰ってお母さんにクラシックのCD貸してっていったら……

『トッカータとフーガ バッハ オルガン名曲集』

『W.A.モーツァルト ピアノソナタ』

『シューベルト 交響曲 第9番 ハ長調 D.944"ザ・グレイト"』

 ど定番の3枚を貸してくれた。

雪夜ゆきやもクラシック好きなの?お母さんの子ね~やっぱり」

 満足そうに微笑む母親の薄っぺらさにイラッときた。


 兎にも角にも、手持ちの武器はコレだけだ。

 僕は、あくびをしながら聴き流して、翌日の放課後、先生に話しかけたんだ。

 何を話したかなんて覚えていない…。

「桜木くん、ヴァイオリン好き?」

 先生が聞いてきたから、

「はい、好きです」

 と答えた。

「そう…じゃあCD貸してあげる」

 そういうと音楽室へ誘われた、もう隣を歩くだけでドキドキしたよ。

 先生の顔なんか恥ずかしくて見れない。

 先生の薄い黄色のスカートがフワリフワリと揺れる形の良いふくらはぎはベージュのストッキングが覗くスカートに、スリッと僕の腕が付いたり…離れたり…。

(あぁ~なんだか変な気持ちだよ…僕…)


 音楽室には合唱部の女の子が集まっていた。

 合唱部は女の子ばっかり。

「ちょっと選んでくるから、待っててね」

 僕はドキドキしながら音楽室の中で資料室へCDを取りに行った先生を待っていた。

 チラチラと女の子を覗き見ると、スカートから白いショーツが見えたり、服の脇からブラが見えたりと、あぁ夏っていいな~と思った。

「桜木、何しに来たの?」

 クラスの女の子が話しかけてきた。

「うん…先生にCD借りようと思って…」

 僕はピアノの後ろにある資料室に視線を向けた。

 部屋の小窓から先生の後姿が見える。

 長い髪が白いブラウスにかかりフラッと揺れる、うっすらと透ける水色のブラに僕の視線は釘づけだ。

「あ~桜木、いやらしい顔してる」

 女の子たちが僕をからかった。

「してねぇよ!」

 僕がムキになると、女の子たちは面白がってさらに僕をからかう。

「先生のブラジャー見て、興奮してるんだよ、おっきくなってんじゃないの!」

「なってねぇよ!」

 僕は、無意識に股間を押さえていた。

「じゃあ見せてよ!」

 見せろコールが音楽室に響く。

 資料室のドアは閉められ、防音の音楽室、騒ぎは先生に聞こえてない。

 エスカレートした女の子たちは僕のズボンを無理やり脱がしたんだ。

 僕の大きくなったソレを見て、みんな笑ってる。

(恥ずかしい…でも…なんか…ドキドキする…)

 僕は立ち尽くしていた…。色んな意味で。

 先生を見つめたまま…ふいに先生が振り返り、小窓から手を振る。

 先生からは、僕の下半身は見えてない。

(先生…僕は今…僕は今…色々と高まっています…こんな僕でも受け入れてくれますか…)


 僕は、フラフラと資料室に歩き出した。

「ちょっと…やめなよ!」

 女の子が僕の前に立ちはだかる。

「どいてくれ…先生に…先生の所に行きたいんだ…なにか…なにか…できそうな気がする」

「せめて、パンツ履きなよ」

 上級生の女の子が僕のパンツを摘まんで差し出した。

 僕はパンツを受け取ると、履こうと前かがみになる。

 視線を下から前へ向けると、上級生の紺のスカート。

(あぁ…もう…ダメだ…ココに居たくない…恥ずかしい…でも…なんだこの気持ち…)

 僕は、スカートの中へ吸い込まれるように入っていった。


 布の香り…薄く血管の浮く細い脚…女の子の匂い…ふとももと脚を白い三角形のショーツが…このエリアは立ち入り禁止とばかりに覆われている。


「あぁ~………あっ……あぁ~」

 声が漏れていたと思う。


 恥ずかしいくらいに大きくなった僕…どうなるんだという不安…初めてこんな近くで見たショーツ…女の子の脚…香り…パンティ…香り。

 僕は、この閉ざされた空間の空気を思い切り吸い込んだ。

 気を失う寸前の恍惚。

 身体の中から魂が抜かれるような得も言われぬ快感。


 ガタンッ!


 誇りっぽい空気。

 資料室?

 僕の目の前には、水色のショーツ…パンティ…ベージュで薄められた水色の下着。

「先生……」


 僕は、自分のパンツを握りしめ、下半身丸出しで、倒れ込みスカートが捲れ上がった先生の前にひざまずいていた。


「桜木くん…?」

 先生の声で我に返った。

「先生…僕……みんなにパンツ脱がされて…気づいたら……ここで……」

 喜び?悲しみ?不安?歓喜?色んな感情がMAXを超え…僕の目には涙が滲んだ。


 先生は僕を抱きしめてくれていた。

 そのことに気づいたのは、先生の香りが僕を包んでしばらくしてから。

 泣き止んだ僕が、先生と一緒に資料室から音楽室へ戻ると、皆が僕を見ている。


 これが僕の目醒め…性の…そして能力の。


「あぁ…先生…僕は…今でも…あのパンティ…覚えてます」

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