読んだならば責任を負うことになる

現実と区別のつかないほどのリアルさがある。放射能物質や、原子力施設についての詳細な描写、犯行メンバーの一致と不和。そのせいで、読み始めてから、読み終えるまでその世界の中にいたし、読み終えた後も、自分の一部にまだそれがあり続けるような気がする。

個人の上に社会は重くのしかかっていて、社会に背を向けた彼らが、社会のではなく、人間としての正しさを問おうとする。彼らはそのために大きなエネルギーを生み出そうとする。社会がもう少し柔軟であるならば、そこまでのエネルギーはいらないのか、不正を廃した後に何が彼らを繋ぐものとなるのか、それによって社会は成り立つのか。読了後の悲しみを伴う解放感とともに考えさせられることは多い。

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臨界前夜

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