第4話 神様の最後の仕事

「『東の神によろしく』伝承者クローバー」

あたしの声が澄んだ響きを持つ。堅苦しい、

神と伝承者のしきたり道理の挨拶。

「『また会う時には人として』さよなら、ブロット!」

そして、斉唱。

「「『左様なら、又逢う時には人として』」」

あたしは神の部屋、ひいてはこの神の塔の主なので、

筋書きにのっとり、左足から三歩下がる。

肘を曲げ、右の掌を胸に当てて。それは、西の神の敬礼。

西の神だった期間が長すぎたせいか、人だったころの

敬礼の仕方は忘れた。

クローバーは笑顔に涙をこらえていた。

大理石の床に描かれた緑に輝く陣が、最高の光を帯びた。

最後だ。あたしは心配させないよう、最高の笑顔を

クローバーにみせた。

クローバーは融けるように、笑顔のまま白い光になって

いなくなった。

クローバーの笑顔からこぼれた雫が床を叩いた。

静かさを、懐かしく感じた。


もう会えないけれど。それでも何かあたしに残せるものがあるのなら。


…選定魔法を行使する!!(クローバー、あたしの魔法を見ていて!)

西の神独特の紋様が刻まれたペンダント。首に掛けたそれが、

炎の色の光を帯びる。

「棒人間史五千年に由来する、天と地に満ちる定めリーブルよ、

最果てにおける西の神の名において、今、選定魔法を行使する。

つじつま合わせた道の果て、消える業に制裁を、

Poetry of the truthしんじつのうた

赤い光線は、大理石に赤い魔法陣を描く。

光線が最後の一画を描き終わると、あたしは声を上げて、

長い物語を始めた。

「さあ、新しい世界を幸せで満たす魔法を掛けよう…!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る