ゲーム

「ちょっとは手加減してよね」

そういってふくれっ面になる女性。

ここの家の主、茜さんだ。

「茜さんが弱すぎるだけなんですよ。もっとちゃんと二手三手先を予想して動かさないと」

「でも消すことに集中してたらそんな余裕なんてないよ」

そう先ほどまで俺と茜さんとでぷ○ぷ○で対戦していたのである。

しかし茜さんはまだ始めたばかりで○よ○よ歴5年の俺に勝てない。

「もう一回、もう一回しよ!!」

「何回やっても結果は同じでしょうけどね」

そういって再び対戦が開始された。

結局あの後も一回も負けることなく無敗を貫いていた。

そうしてお昼になったのでいつものように昼食を食べる。

「どう?高校生活は順調?」

「高校生活っていってもまだ3か月ほどしか経ってませんよ」

「その3か月でなにか面白いこととか可愛い子見つけたとかないの~」

「そういったことはないですね」

そういうと茜さんはちょっと興奮気味に言った

「もったいない今だけなんだよ、高校生活なんて。もっと楽しいこと見つけないと」

「楽しいことね」

正直高校も確かに悪くない。

同じ趣味を持った友達としょうもない話をしたり同い年の女の子と話をすることは楽しい。

でも俺が一番楽しいと感じるのは茜さんと何気なく過ごす週末だ。

もともと泣き虫だった俺は幼少期のころよくいじめられてたものだ。

そこにいつも駆けつけてくれたのが茜さんだった。

そうして掛けてくれた言葉『いつか強くなって誰かを守れるようにね』。

その言葉通り、俺は弱虫を克服した。

―茜さんを守るため。


あれから私と祐樹は夕方までゲームをしていた。

いつもの時間になり祐樹は自宅に帰っていった。

祐樹が帰った後も私は無理を言って貸してもらったぷよぷよをひたすらやっていた。

『一週間後!!絶対に勝つんだから!!』

宣言したからには負けられない。

そう誓いひたすら連鎖の練習をする。

ぐぅ~きゅるるる。

お腹が鳴ってふと時計を見ると夕食の時間だった。

「夢中になりすぎちゃった、夕食作らないと」

電源を落として台所に向かう。

パスタを茹でテキパキと準備をする。

お皿に盛り飲み物を準備して机に向かう

「いただきます」

そう呟いて食べ始める。

私はお昼一緒に食べてた祐樹のことを思い出す。

弱虫だったあの子が今ではすごくカッコいい感じになっちゃって…

きっとあの子にも守りたいものができたんだろうなと思って聞いたのに結局聞けずじまいだった。

「あの泣き虫ゆうくんがね~」

一体どんな可愛い子がゆうくんを変えたのかを思いながらパスタを口に運んでいた。

―寝るためにベッドに入りながら一週間後のことを思う。

絶対に負けたくない、祐樹の前では強いお姉さんでいたい。

どんな小さなことでも祐樹の前で弱い自分を晒したくない。

そんなことを思いながら茜は眠りについた。


一週間後、いつものように茜の自宅にやってきた。

いつものようにぷよぷよでの対戦。

一週間前と違うことは…勝者が茜になったことだろうか

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