雪が凍ったようにざらざらと輝く表面、甘みを抑えて塩気さえ感じるような清涼感、噛めば噛むほどにあふれる瑞々しさ。一言で言うなら「おいしい」。梨はおいしい。


梨は一か月ほど前、例によって母が私に寄越したもので、ひっそりと二個、私が臥せっている間に野菜室に入れていた。


一か月近く放置してしまったので、トマトの二の舞になるのではと思って、びくびくしながら表面を撫で、軽く押してみた。


なんのことはない。ぶよぶよせず、しっかりした梨だった。


ごろっとまるまる一個を剥く。一人で食べるには大きく見えたそれは、細かく切ってみると小さな皿におさまった。


フォークを刺すと果汁が飛んで、透明な丸い水が白いテーブルにころんと転がった。一か月経ったのによくここまで瑞々しさを保ったものだと感心する。人参やピーマンなんかすぐにしなびるのに。


八等分したのをさらに四つくらいに適当に切った、そのうちの一切れを口にした。りんごともまた違うしゃりしゃりした食感。


食レポをしたいのはやまやまだが、


「おいしい」


バカ舌な私にはこれが精一杯。おいしいもんはおいしい。まるっとぺろっと平らげた。


しかしあと一個残っている。

そのまま食べるか、ジャムにするか、日本酒に漬けてみるか。それが問題だ。

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