This is a apple/That is a citron 03

津軽。

戦国時代の現状、日本の最北端といってもいい。

現在の青森県に位置する。


ここの何がやばいか。

端的に言えば、津軽平野という地域であるということだ。


津軽平野、日本国有数の平野である。

それは、現代の関東平野の発展を見るならば魅力だろう。

しかし、ここにはある前提が存在する。


そこが首都であることだ。

莫大なリソースをつぎ込んで整備を続け、ある程度固まったところでスクラップ。

そこから発展した技術・財貨・資源を惜しみなく用いた姿がそれであった。

何故そんなことができたのかといえば、そこが首都だったからという理由がある。

明治政府が推し進めた中央集権制度が根底にあることも否定しない。

発展は発展を呼び、さらなる開発、開墾、開拓を進める原動力になった。


奇跡の高成長とはまさしく奇跡であった。


だが、それは全くの未開拓地になると話が大きく変わってくる。

そう、ここ津軽平野では、そんなリソースも技術も知識もあらゆるものがない。

宝の山ではある。磨けばの話であるが。

うまく開墾と開発を進めることができれば十分な国力を持つこともできる。

この戦国時代において石高であらわされるのは取れるコメの量であるからだ。

ソレは全く同じ意味で国力を示す。


色々な意味で恵まれている。

しかし、様々な意味で恵まれていない。


これが全く矛盾しない。おかしな話でもない。

純然とした事実として。


津軽という土地は地雷である。


そう、津波で瓦礫になった日本でも屈指の天然の良港とか。

そう、そもそも発掘できない世界最大クラスの金鉱脈とか。

そう、無駄に特に意味なく知名度だけ高い特徴的な形とか。

そう、世界で最も生産されているのに関わらず知名度皆無の林檎ブランドとか。

そう、第二位が有名すぎるせいで全く知られていない日本最大の砂丘とか。


旨味を悉く潰していくのは何か策略でもあるんじゃないかと思うほどに。

そして佞武多祭り、さくらまつり、紅葉祭り、雪まつり。

どれもこれも祭だけが有名であった。四季がそろっている。


他にも世界遺産白神山地や奥入瀬渓流など、自然は豊かである。

開発している余裕が無かったとも言うが。


さて、話を戻そう。

まあ、これだけ書けば津軽がどれだけ地雷かはわかってもらえただろう。


本題に入るとしよう。

日本の河川が海外と比べ異常に急勾配であることはよく知られている。

この津軽平野を流れる岩木川も例外ではない。むしろ結構急だ。


しかし、その後。

恐ろしいほどに平坦な平野に入る。


厄介なのがこの岩木川、最終的に十三湖に流れる。

十三湖は海に面した湖で、水深が最大でも3mと非常に浅い湖である。

そしてその出口は、土砂が大量に流れ込む河川の出口としては狭い。

定期的に土砂が溜まり、最終的に出口をふさぐと何が起きるか?

答えはそう、氾濫である。


岩木川に流れる濁流はそのまま平野を包み、あらゆるものを流し、壊し。

そして、豊かな土砂だけを残すのである。


因みにこれを方言、津軽弁であらわすとイガルという。


完全な余談をしよう。

明治時代、政府は屯田制によって北海道の開拓を推し進めた。

勿論、莫大なリソース、豊富な資源、潤沢な知識をもってして進められた。

その想像もつかない努力と情熱には感服するばかりである。


周知のとおり凄絶な開拓であった。

それまでは、津軽藩一国がその役割を果たしていた。

全く未開拓の土地を開拓していく役目は、一貫してこの地にあったのである。


江戸の時代約300年。

決して容易ではない。

それだけの平和、ついに成しえなかった。

首都のように、余りに遠すぎた理想。


如何程の無念なのだろうか。

足りないものはあっただろう。

失ったものは測れない。


それでも挑戦を続けた人々に、敬服の念がないわけではない。

しかし、余りに無謀。


技術という矛を持たず。

財産という盾を持たず。

ただあるのは志ひとつ。


そう、迷い無く言おう。

戦国時代、江戸時代、明治時代。

少なくともその間。如何にしても青森の地には行ってはならない。と。


その地は地獄。

阿鼻叫喚の修羅場である。

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