「コンテクスト」と「文脈」

 今、綾辻氏の館シリーズ4冊を読み終えて(残りは未入手)、いよいよ森博嗣氏のデビュー作「すべてがFになる」に取り掛かりました。


 うひょー。


 いきなり、うひょー、です。専門用語と理系文脈のオンパレード!


 ちょっと眩暈がしましたが、気を取り直して何とか冒頭に当たる登場人物二人の会話シーンを読み終えました。続きはまた明日って感じです。

 まず、この作品はミステリクラスタの話題にちょいちょい登場するタイトルの一つですから、ハズレのはずはないという事を。

 目の肥えたコアなファンたちがしてる会話で頻出するタイトルにはハズレなし。しかも目的のはっきりしたミステリというジャンルですから、意識の齟齬も生じにくい。目的は一つ、「気持ちよく騙してくれ」これです。


 毎度の事ですが、読むに当たりまず文章の面で気掛かりがありました。私は「一文一意」という基礎を馬鹿正直に守っているプロ作品というものが嫌いです。


 一文が、たった一つの意味にしか読み取りようがないように書かれた作品。ごめんなさい、どうにも苦手です、これ。アマチュア作品の多くはコレですし、ラノベ界隈ですとプロ作品でもどうかするとこっちのが多い気がしますが。

 エッセイとか記事、ノンフィクションモノならそもそも小説と思ってないんで平気なんですが。それらは小説の文章を読んでいるのではなく、お手紙とかレポートとか、なんかそういうのを読んでる気分だから平気なのです。報告なのですね。

 けれど、小説でそれをされると……報告ですから、僕の妄想聞いてくれ、になっちゃうわけで、苦手と感じてしまうのはご容赦下さい。


 で、今回の「すべてがFになる」ですが、これは理系の専門用語と文脈が豊富に出てきて、三流高校しか出ていない私なんぞは馴染みのない単語だらけで「うわ~」となっちゃったわけですが、大学卒とかの読者はそこまででもないでしょうかね。


 私は特に、ADHDの卦がありますんで頭の回路がちと風変わりに出来ています。なもんで、要らないと判断したものは徹底して記憶しないという特徴を持っていまして、つまり、ボキャブラリーが貧困なのです。

 せいぜい、世間一般で多くの人が普通に知ってる、普及率の高い単語くらいしか記憶に留めておりません。単語という、事象に対する省略語など記憶容量の無駄と思っているらしいわけで。辞書という外付けハードに頼ればよい、という次第かと。

 英語などは文法ごと全滅でして、これは日本語という言語をすでに持っているので予備としても必要ない、と断じてしまっているからでしょう。そんなに容量を空けておいてどうすんだ、とも思うのですが、頭の仕様なので仕方がないのです。


【文脈】Goo辞書さんより引用

1 文章の流れの中にある意味内容のつながりぐあい。多くは、文と文の論理的関係、語と語の意味的関連の中にある。文章の筋道。文の脈絡。コンテクスト。「文脈で語の意味も変わる」「文脈をたどる」

2 一般に、物事の筋道。また、物事の背景。「政治改革の文脈でながめると」


 文と文の論理的関係、意味的関連、とありますように話者の環境や人間関係相関におけるクラスタの言語、というべきが「文脈」という事になります。

 なので、「すべてがFになる」の作者は理系畑の人ですので、そこから紡ぎだされる文脈も本人が意識して変えなければニュートラルな状態ですでに理系なのだ、という事です。お付き合いしてる人間関係の中で特殊言語が成立している、と。


 先に読んでいた「コンテクストオブザデッド」はそういうお話でした、確かに。では、例えば私などは日常的にバラエティ番組と洋楽邦楽の電波を浴びるような生活してますので、私の書く文章のコンテクスト、「文脈」はかなりMC的であり、また歌詞的なのではないかと思います。


 書き手の置かれた環境、また書き手の関わる人間関係、クラスタの内容に左右されるのが、その文章であり、文脈にまで及ぶという事で今回はここまで。




 「ラノベばかり読むな、」の意図するところも、これに関連すると考えれば言語や思考の組み立てがかなり限定的になり、狭まるとか、そんなところだと考えます。

 ラノベというのはかなり特殊なコンテクストで、実際は、色んな他の文脈からの借用を省略形で使用する、という形態を取りますので、視野狭窄は天敵のはずなのですね。

 省略された借用の文意を、さらに省略して書き表す、というような事になればそれはあまりにも狭い範囲のクラスタにしか通用しませんので。


 ここまで。

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